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ないしょの話 3
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「そういえばもうすぐだな、篤のテレビ出演」
高遠さんが壁にかかってあるカレンダーを見てそう言ってきた。
「そうなんですよー。もう考えただけで心臓ばくばくです」
「あの歌、テレビで歌う…ねぇ。どんな心境よ、奏くん?」
ニヤニヤからかうように奏をつつく聖夜さん。
「…べつに。アレは篤の歌だから…頑張って歌えよ」
なんて俺を見上げてくる奏の顔は…真っ赤だ。
え、なんで?
周りを見ると、みんなニヤニヤ。
え、なんで?
すぐに奏に視線を戻すと、奏はおもむろに立ち上がって。
「風呂、洗ってくる!」
なんて言って、リビングを出ていった。
???
なんで今…風呂掃除?
なんて頭にハテナばっかり浮かんでいる俺をよそに、三人は堪えきれないとばかりに笑いだした。
「ぶはっ!奏をこーやってからかう日がくるなんて…!」
おもしれー!なんて言って笑う聖夜さん。
「あー、ヤベ!奏がかわいく見えた!」
惚れるかもー!なんて言って笑う社長。
「からかいがいがあるな、今の奏は」
もっといじめるか、なんて言って笑う高遠さん。
いや、何で笑って…っつかなに言ってるんですか、後の二人!
笑いがおさまった聖夜さんが、イタズラ心たっぷりの笑みで俺を見た。
「イイコト教えてやるよ、篤」
……イイコト?
「あの歌はな。お前に宛てた、ラブレターなんだよ」
「……え…?」
いたずらたっぷりの笑みを浮かべる聖夜さんの顔をポカンと見つめる。
ラブ、レター…?
「歌詞の内容は、お前に対する奏の気持ちが綴ってあんだよ」
「え?…いや、だって、歌詞の内容…映画の…朔の想いがたくさん…」
思ったもん、俺。
映画の中の朔の想いが、つまった歌詞だって…。
「それは、うまいこと映画の内容に合っただけ。
あの歌詞、ほんとは映画のために書いたヤツじゃねーよ」
うそ…。
信じられずに固まる俺。
そこに、高遠さんの声が聞こえた。
「あの歌、本当は世に出すつもりはなかったんだとよ。
だけどお前と一緒に過ごすうちに、どうしても歌って欲しくなったんだって言ってた。
恥ずかしいし、照れくさいけど、篤の声で歌ってほしいって」
ふと甦る、歌詞をもらった日のこと。
映画に合った歌詞を作れちゃうなんてすごいねって言ったら、奏は曖昧に笑ってた。
あの気まずそうな、照れくさそうな顔の意味は、こーゆうことだったんだ…。
こみ上げる、愛しさ。
どうしよう…すげー嬉しい。
「なぁ、篤。奏に聞いた?いつからお前のこと好きだったのか」
社長はニマニマと笑みを浮かべている。
「聞いても、教えてくれませんでした」
「じゃあそれも教えてやるー。三年前だよ、奏がお前に惚れたのは」
「え?」
三年前?
え…うそ、会ったことある?…いや、ないない。
あんなインパクトのある人、出会ってたら絶対覚えてる。
「まーいわゆる、一目惚れ?」
ひとめぼれ?
え、なに、じゃあやっぱり会ったこと…
「お前の写真になー」
「……写、真…?」
「そ。お前が初めて大手のスポーツ飲料の広告モデルやったときのやつ」
初めての広告モデル。
街中に、俺の写真がいくつも貼られてて…感動したのを覚えてる。
「それ見て俺に『あのモデル知ってるか?!』って聞いてきてさ。
俺の事務所の奴だけど?っつったら、固まってた」
その時のことを思い出したのか、ケラケラと笑う社長。
「…マジですか…」
そんな前からだったなんて…ビックリした。
「俺前に言ったろ?
『お前の写真見て、一目惚れする奴だっている』ってよ」
そう言われて思い出したのは、このメンバーで初めて飲み会をした日。
みんなの顔が整ってる…なんて話をしたときに、そんなことを言われた。
…奏のことだったなんて。
「ついでだからコレも言っとくか」
高遠さんがニヤっと笑って俺を見た。
「広告モデルでお前に気づいて、その後お前が出てるCMを見たんだよ。
その時奏は、お前の声にも惚れたんだってよ」
「へ?」
「いつか歌わせてみてーって子供みたいな笑顔で言ってた。
まー要するに、奏はお前にベタ惚れってことだ」
……次から次へと発覚する、奏の想い。
俺はまだついて行けずに、頭がふわふわしてる。
まさか、奏がそんなに想っていてくれたなんて。
ドキドキと心臓が落ち着かない。
と、そこに奏が帰ってきた。
俺の横に座って、ジュースを手に取り飲み始める。
俺といえば、奏の姿を目にとめた途端、よりいっそう俺の心臓が飛び跳ねて、顔が熱くなっていた。
「…篤?どうかしたか?」
そんな俺を心配そうに見上げる奏。
「へ?あ、いや…その…」
視線が合って、ますます顔が熱くなる。
「篤?……なんか言われたのか?こいつらに」
「いや、あの…」
…言っていいのか?
奏のいないところで色々聞いちゃいましたって…!
「お前ら…何言った」
奏は俺以外の三人をぐるっと見渡した。
すると三人はまたいたずらな笑みを浮かべて。
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