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反響
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テレビに出演してからの反響は俺の想像を遥かに超え、ものすごいものだった。
“KANADE”が作る歌だというだけで注目を集めていた。
だけど、どうやら俺の歌声も、世間のみなさまは褒め称えてくれたみたいで。
レコード会社や事務所に、問い合わせが殺到したらしい。
社長が、満面の笑みで、うちの稼ぎ頭になれよーなんて言ってきた。
みんなが認めてくれたのが嬉しくて、それが自信に繋がる。
「あれ?買ったんだ、この雑誌」
テレビに出演してからずっと忙しかった俺は帰ってくるのはほとんどが夜中だったけど、今日は約三週間ぶりに夕方に帰って来れた。
そして帰って早々、テーブルの上に置かれていた雑誌を見つける。
それは俺が表紙を務めたものだった。
…初めて遅刻してしまった日に撮ったやつ。
「あーそれな。肇が買ってきた」
「そーなんだ」
奏はその雑誌を手に取り、表紙をじーっと見て、むーっとうなった。
「…なんでそんな難しい顔すんのさ」
もしかして、顔、変?
自分ではよく分かんないけど、その雑誌見た人から、「別の顔だった」とか「アレはちょっとグッときたわ」とか言われたんだよね。
この時もなんか色々見抜かれちゃったし、やっぱ変なのかも…なんて考えてたら、奏が俺をじぃっと見上げた。
「悩ましい表情がたまらない…」
「は?」
悩ましい??
突然言われて、ポカンとなる。
「って世間では騒いでるらしいぞ」
「へ?」
どこか面白くなさそうな表情のまま、奏は続ける。
「かまってやりたくなるし、甘えさせてやりたくなる。
だけど、そんな色気のある悩ましげな表情をさせるのは、自分でありたい。
そーやって言われてるんだって。肇が言ってた」
「…そーなの?」
…悩ましい…かぁ。うーん。
「…奏は、どー思う?」
さっきからむーっとした奏に問う。
あんま良く思ってなさそうだよね。
「…なんか、複雑」
「複雑?」
「お前が注目されんのは、もちろん嬉しい。…んだけど、ちょっと妬く」
え。
「こんな表情、撮った奴に。…見抜いてるってことだろ?お前の心。
それが、なんかムカつく」
…うわ、なんか…めっちゃ可愛いこと言ってますよ、この人。
俺は我慢できなくて、ぎゅーーっと奏に抱きついた。
「あーもーっ。可愛いーーー」
「おわっ、ちょ…かわいいってなんだ、かわいいって」
「ヤキモチとか、ほんと可愛いっ」
「…っ、そ、れは…」
下を向く奏に、ふっと笑みがこぼれる。
「あのね、奏」
「…なんだよ」
ありゃ、ちょっといじけてる?
そんなとこも、可愛い。
「このとき…俺、奏のことばっか考えてたんだよ」
「え?」
「そしたら、カメラマンの…上原さんっていうんだけど、なんか見抜かれて…。
カメラマンって、なんかそーやって見抜く人多いんだよね。水瀬さんもそーだし」
「あぁ、和馬さん…分かるかも」
「そーゆう職種って、人の表情に敏感なのかな?
でも、すぐ見抜かれちゃうぐらい、ずっとずっと奏のことばっか考えてたんだけどさ。
だから、みんながいう…悩ましげ?な顔も、奏がさせたんだからね」
いたずらっぽく笑ってそう言うと、奏は顔を赤くした。
「まぁ、悩みは解決したからいいんだけどさ。
こうやって恋人になれたから。今幸せだしー」
さらに続けてそう言うと、奏はチラリと俺を見て、ふっと笑った。
「俺も幸せ」
柔らかい笑顔に、きゅんとなる。
「でもヤキモチは嬉しいかな。ありがと」
「…もう言うな」
恥ずいから。
そう言って俺の肩に顔を埋めた奏。
ははっ。
なんかホント、幸せ。
しみじみそう思った。
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