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リスキー 2
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「はい」
『よぉ。ポスター見た?』
なんてタイムリーな電話なんだ。どこかにカメラでもしかけてあるんじゃないの?
「はぁ…見ました、けど」
『奏と?』
「えぇ、まぁ……」
『奏に代わってくんね?』
「はぁ…」
奏に携帯を渡す。
「社長から。代わってって」
「あ?葵?」
携帯を耳に当て、なんだよ?とぶっきらぼうに対応していた奏は、しばらくすると眉間にシワを寄せて、最後には赤くなった。
「ばっ……うっせ、バカ葵っ!」
なんて叫んで携帯を俺に突き返してきた。
社長…何言ったんだろ…。
電話の向こうからケラケラと愉快そうに笑う声が聞こえた。
「社長?」
『くくっ。わりぃ、篤。奏機嫌悪くなったかも。なだめといて』
笑いをかみ殺しながら、社長が謝る。
「何言ったんすか?」
ぶつぶつ文句を言いながら、キッチンにコーヒーを入れに行った奏の後ろ姿を眺める。
『ん?″篤、セックスんときってあんな感じ?″って聞いただけだけど?』
「はぁっ!?」
何聞いてんだ、この人!
『いやぁ、和馬がよぉ。いい表情出せたっつーから。かなり″リスキー″な男に仕上がってんじゃね?って。
いやぁ、いい仕事したなぁ、篤』
……喜んでいいハズなんだ。
ブランドに見合った仕事ができたんだって。
でもさ。
エッチんときの……って言われたら、正直もんのすげー恥ずかしいんですけど!
めちゃめちゃプライベート暴露したみたいな感じがするんですけど!
『それにしても奏の反応からして、ズバリだったみてーだなぁ。
あー、愉快。お前、あんな感じなんだなぁ』
「……社長。頼みますから、やめてください」
そーやってからかうのは。
知ってる人にしみじみ言われんの、かなり嫌です。ダメージ大です。
『わりーわりー。
ま、恋人から見ても″リスキー″な広告っつーわけだし。
話題沸騰間違いなし!だな』
……俺はどんな反応をすればいいんでしょーか。
と、黙ったままでいると、社長がふっと笑った。
『篤。いい″絵″なんだ、恥ずかしさなんて捨てろ。
むしろ、本番はこんなもんじゃないですよ?ぐらい開き直れ。お前は、プロだろ?』
社長特有の、柔らかい声。
その声は人を説得するような宥めるような自信をつけさすような妙な力がある。
ホントこの人は、これだから、憎めない。
「はい」
いつだって、最後はちゃんと指摘してくれる。
『ま、奏にとっちゃ愛しのダーリンのんな顔が公開プレイなんて複雑だろーけど。
そこは篤がなだめとけよー。んじゃな』
と、最後は軽い口調。
うん、公開プレイとか言わないでください。
見直したのに台無しです。
通話が切れた携帯をテーブルに置き、どこかボーッとした表情を浮かべながらコーヒーをすする奏を見る。
何、考えてんのかな。
「奏」
「ん?」
奏の隣に座る。
「えっと…社長が、ごめん」
「なぁんでお前が謝んだよ」
ははって笑いながら、俺を見上げた。
「葵のやつ…俺がポスター見るタイミング見計らって電話かけてきやがった。ホント暇なヤツ」
ぶつくさ文句を言う奏に、苦笑いがもれる。
そんな俺を見た奏が、目を細めて笑った。
「篤」
「ん?」
「……確かに、複雑だけどさ」
……そう、だよね。
俺は、プロだ。
他の人になら、いくらでも胸を張れる。
だけど、奏に嫌な思いをさせるのは、やっぱり、さ。
少し、チクリとする。
だけど奏はそんな俺の胸のウチを見透かしたように、優しい笑みを浮かべた。
「だけど、同時に誇らしくもある」
「え?」
「俺の恋人は魅力的だろ?って。自慢したくなる」
「…奏」
「だから、お前はこれからもいい仕事して……俺を惚れさせろ」
そう言って、俺の頭をくしゃって混ぜた。
「…うん、頑張る」
奏の言葉が嬉しい。
そんな言葉をもらっちゃったら、俺、舞い上がっちゃうよ。
「ありがと、奏。大好き」
「ん、俺も」
近づく顔。
交わしたキスは、コーヒーの味がした。
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