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「どーした?ボーッとして」
「んー…。」
「何だよ、昼飯食いに行こって誘っときながら。なんか話、あったんじゃねーの?」
「んー…。」
首を傾げる聖夜が視界に入るけど、俺の心は上の空。
聖夜を昼飯に誘ったものの、別に話があったわけでもなく…ただなんとなく。
「なに、篤とケンカでもしたか?」
「んやー、べつに。一緒に風呂入るぐれー仲良し。
頭も洗ってくれちゃって」
そう。そうなんだよ。
篤のやつ、サラッと一緒に風呂入ろーとか言ってくんの。
意識もされてない?俺って。
頭洗ってあげるーとかって無邪気に言いやがって。
くそ、俺がどんなにドキドキしたかなんてわかんねーだろ。
頭気持ちよかったけど。
「一緒に風呂?仲のよろしいこって」
「だろー。まぁ、全然意識されてないけどねー」
はぁ、なんて無意識にため息が出る。
「意識、ねぇ…」
なんとなく含みのある言い方に、ちらりと聖夜を見やる。
「なんだよ」
「んや、べつに」
それよりさ、と聖夜が話を変える。
「歌のほうは?順調なのか?」
「あぁ、うん。だいぶ様になってきたし、明日からあの歌に入る」
「そ。どーよ、心境は」
ニヤニヤと笑う聖夜。
んだよ、その顔。腹立つなー。
「べつに。」
そっけなく答えるも、聖夜のニヤニヤが崩れることもなく。
「あーはいはい!嬉しすぎてどーにかなりそうです!」
と正直に答える。
ぶはっと吹き出すように笑った聖夜は、素直でよろしい、なんて言いながらぐりぐりと頭を撫でてきた。
子ども扱いか。
深夜2時。
まったく眠れず、ベッドの上でごろごろ、ごろごろ。
あーーーー、ヤバかった。
俺って、こんな動揺する奴だったっけ?
思い出すだけで、ツキンといたむ心。
そうなのかな、とは思ってたけど。
好きなひと、か。
今日は初めてあの歌を篤が歌った。
『こいのうた』を歌う篤。
歌の中に、篤の想いが、込められていく。
あぁ、今こいつの頭には、愛しい人がいるんだな。
そう思わずにはいられないほど、想いがあふれてた。
そう感じた俺は、自分でも驚くぐらい動揺して、篤もちょっと変に思うほどだった。
あん時、飲みもん取ってくるって篤の前から離れて落ち着いたけど。
あーあ。
俺の恋も、ここで終わりかな。
歌の仕事が終われば、篤がここに住む理由もなくなる。
何の接点もない俺たちは、きっとそのまま疎遠になってくんだろうな。
……せめて、オトモダチぐれーにはなれるか?
なんて、女々しいか。
自嘲めいた笑いがこぼれる。
「好きだよ、篤………」
小さくつぶやいた俺の声は、シンと静まり返った部屋の中で、はかなく消えていったーーー。
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