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*番外編*1111
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「ほい篤」
撮影後に水瀬さんからポイっと渡されたのは、赤いパッケージのお菓子。
子供の頃から親しみのある、このお菓子は。
「ポッキー?うわなんか久しぶりかも」
「だろだろ。このオーソドックスなポッキーって最近あんま食わねーよなぁ」
「確かにそうですよね。急に食べたくなったんですか?」
「まーな。今日ってポッキーの日なんだと」
「あぁ〜、11月11日だから?」
「そうそ。んでつい買っちまった」
「お菓子会社に踊らされてますね」
「ふはっ。確かに!」
久しぶりに口にしたそれ。
うん。おいしい。
「ただいまぁ」
「おかえり」
ソファに座ってた奏が、立ち上がってこっちにやってくる。
ぎゅうっと抱きしめて、そしてちゅっとキスをすると、奏の口からチョコの香りがした。
「甘い匂いする」
思わずそう言うと奏があぁ、と思い当たるようなしぐさをして。
「お菓子食ってた」
「チョコ?」
「チョコっつーか、ポッキー。久々に買った」
おぉ、ここにも踊らされてる人が一名。
思い出してクスッと笑うと、不思議そうに見上げてくる奏。
「ポッキーの日だから?」
「うん」
「水瀬さんと同じだ」
水瀬さんと話した内容を告げる。踊らされてますねってところで、奏も確かに!と笑った。
隣に座って俺も一緒にポッキーを食べる。
「いつからポッキーの日って呼ばれるようになったんだろー」
ちっちゃい頃はそんなふうに呼んでた記憶ないしなー。
「あぁ、平成11年11月11日かららしいぞ、今日がポッキーの日って決められたの」
「おぉ、1が6個も並んでる。よく知ってたね、奏」
「葵に聞いた。アイツ、やたら記念日に詳しいんだよ」
「へぇー」
「今日もくだんねーメール送ってきやがった」
見る?そう言って携帯を操作した奏が画面を見せてきた。そこには。
『今日はポッキーの日だぞー。篤とポッキーゲームでもしたら?ポッキーの数だけちゅーができんぞ!』
……うん。ほんとくだらないです、社長。
「まぁでもせっかくだから?ほい」
ノリでポッキーをくわえて、奏の方を向いてみる。
「やんのかよ」
おかしそうに笑いながらも、反対側をくわえ、見つめ合う。
……うわ、これ地味に恥ずかしい。
ポッキー1本分の至近距離。
奏の表情を見るに、同じ心境なんだろうな。
早く食べちゃおう、うん。
そう思った俺は、歯でポッキーをかじった。
奏も少し遅れてかじり始める。
サク、サク、サク。
だんだんと近づく距離、あと少しで唇が触れる、その時…奏の瞳が閉じられた。
合わさる唇。触れるだけの、キス。
なんだか…照れる。
離れて、見つめあって、お互い照れたように笑って。
「なんか…ハズカシイね」
「…あぁ」
「…もっかい、する?」
「…うん」
少し迷ったあと頷いた奏。
ポッキーを1本取って、くわえる。
そして反対側を奏が。
両側からかじられ、短くなっていくポッキー。
徐々に近づく奏の唇。
鼻先が触れると同時に、奏の目が閉じられた。
ーーーこの日、一体何本のポッキーを奏と食べたかは…二人だけの秘密。
普通にキスする方がモチロンいいけど。
年に一回、この日だけは…ノリでやってみるのもアリかもしれない。
END
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