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*番外編*あかりをつけましょ?
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「そーう、できたよー」
「んー」
篤に呼ばれて、俺は鍵盤から手を離して立ち上がる。
ピアノのふたを閉めてから篤のところまで行くと、いつもの柔らかい笑みを浮かべて見下ろしてきた。
「今のなんて曲だっけ?聞いたことある気がする」
「今の?アヴェ・マリア」
「あぁ、へぇ。あれがそうなんだ。なんか優しい音だね」
「母親が好きでさ。よく弾いてくれた。子守歌がわりだったみたいだし」
「子守歌?」
「アレ弾くとよく寝たんだってよ、俺」
「ピアノが子守歌とか、音楽一家って感じだねー」
「そうか?」
篤の後に続いて階段を上がる。
「腹減った」
「いーっぱい作ったからたくさん食べて」
「おう」
リビングに足を踏み入れて、ダイニングテーブルに目をやると…そこには数々の料理。
一際目立つ、イチゴをたーっぷり使ったデコレーションケーキには、『HAPPY BIRTHDAY』の文字。
3月3日。世間では女の子の節句の日。
今日は俺の誕生日だ。
歳も30を過ぎれば別にめでたくも無い気はするが、でも大切な人に祝ってもらうのは特別なワケで。
おぉ、と数々の料理に関心しながら、席につく。
「奏」
優しい声に呼ばれて顔を上げると、あたたかみのこもった瞳が弧を描いて俺を見つめていた。
「誕生日、おめでとう」
「…ありがとう」
うん。大切な人からのおめでとうは、やっぱり特別だ。
並ぶ料理の数々は、ベタにひな祭り使用。
だけど、すんげー手のこったモノになっていた。
ちらし寿司は一口サイズにまるでお菓子のミルフィーユみたいになっていて、乗っかってる具材も全部違うし、うしお汁の中にあるハマグリはでっかくてプリプリ、海鮮の生春巻きは色鮮やかで、ホタテのソテーもキュウリやにんじんを使ってオシャレに盛り付けられていた。
ほかにもピンチョスやスープなど『量は少しずつ、品数たくさん』という、贅沢さ。
これらすべて、ひな祭りなんてしたことないと言った俺に、篤が『じゃあ誕生日はベタにひな祭りご飯作るね』と、ひとりで作ってくれたものだった。
海外ではひな祭りなんて習慣はなかったし、祝うこともしなかった。
当然両親はひな祭りの存在を知ってたけど、俺男だし。女の子にしょっちゅう間違われてはいたが。
「んまい」
「良かった」
嬉しそうに笑う篤。
このところますます忙しく、今日この日がオフなのは本当にたまたま。オフと言っても、帰って来たのは午前様。
せっかくの休みに料理なんてしなくていいと言ったけど、お祝いしたいから、と言われてしまえば黙るしかない……嬉しくて。
俺のために作ってくれた。
だから、俺はそれをしっかり堪能して、うまい、と言い続けた。
おいしいご飯に、おいしいケーキを存分に堪能した次に堪能するのは…そりゃもう篤なワケで。
「…んっ、ふ、あっ…」
「ビクビクしてる。かわい」
執拗に胸をいじられ、敏感になったソコを舌で転がされると、ビクンと跳ねる腰。
開いた手は体中を撫で回していて、際どいところを触られるたびにもどかしさが募る。
「っ、あつし、ちゃんと、さわ…ってっ」
素直にそう声に出すも、んー?ととぼけた返事。
「ひぁっ、んっ、あつ、しっ」
「まーまー。じっくり感じてよ。奏に触るの久々だからさー。ゆっくりしたい」
ちゅ、ちゅ、と鎖骨や首筋、心臓の上、わき腹、へそ、腰、と軽くキスをしては、時折キツく吸われてまたも腰が跳ねる。
「あ、そうだ」
何か思い立ったのか、覆い被さっていた篤が少し離れる。
ぐーっと手をサイドボードに伸ばして何かを掴んだな、と思った瞬間…薄暗かった部屋に煌々と明かりが灯った。
薄暗さに慣れていた俺の目に急激に光が入ってきて一瞬眩む。
「あ、ごめん、まぶしかった?」
「ん、…だいじょぶ。っつかなんでつけんの。消せよ」
あまり明るい部屋でするのは好きじゃないということは篤も知ってるハズ。
…恥ずかしいんですよ。全部見られてると思うと。
「いいじゃん。今日は」
「なんで」
「ひな祭りだし」
「どういう理屈それ」
「あかりをつけましょ、ってあるじゃん」
「そりゃぼんぼりの話だろ」
「まーまー」
「まーまーって、おい、んっ、あんっ」
にぃっこりと笑った篤は手をせわしなく動かしはじめ、俺の弱いポイントを容赦なく攻めてくる。
それに感じるまま声を上げていくにつれ、明かりどころの話じゃなくなっていくわけで。
「んっ、ふ…あっ」
「やわらかくなってきたね。気持ちい?」
「きもち、いっ…あぅっ」
「きゅうって締まった。んーそろそろいっかな。ナカ入ってい?」
「んっ、はやくっ」
指が抜かれてすぐにすぐに熱いモノがあてがわれる。そしてやらしい音をたてながらゆっくりと入ってきて、その隙間なく埋まっていく感じに、ため息がこぼれる。
「奏」
「んっ、な、にっ」
「愛してるよ」
「──っ、んんっ、あぁっ」
「ははっ、締まった」
最初はゆっくり、だけど最後の方は獣(けだもの)のごとくがっつかれ、それでも甘い悲鳴を上げてしまう俺。
堪能したのか堪能されたのか。
このところ篤のベッドテクがハンパなく上昇している気がするのは、気のせいじゃあないだろう。
翻弄されつつも、すこーーしくやしい。
篤の誕生日、覚えてろよ。
と、画策して、俺の誕生日は終わりを迎えた。
END
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