アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
俺様きたる
-
俺は今日も同じ時間に起きて、同じ電車に乗って、同じ様にみんなに避けられながら、同じ時間に帰宅した。
いつも通り日が暮れて、今日もなんてことのない平凡な毎日の1ピースになる。
はずだった。
ガチャリ
「ただいま」
「おい、おせぇぞ。お前のせいで俺の晩飯が冷めるとか、マジ死んでこいよ」
(いや、うん。誰こいつ。)
返ってきた返事は母のものではなく
どこぞの馬の骨かわからん、チャラ男だった
「あははっ面白いのねぇ、郁人くんったら」
「そうだろう?俺の自慢の息子だよ」
(いや、面白くもなんともねぇよ、母上。つか、隣の男誰だよ)
俺の母上は、俺を女手一つでここまで育ててくれた。そのわりに、若々しくてシワひとつない、家族贔屓なしで見ても美しい人だ。
そんな母上の隣に知らない男がいる。
母上と同じくらいの歳で、若々しくハンサムで紳士的な男だ。
この人なら母上を幸せにしてくれる。
一目見てそう思った。
「早く座れよ。お前」
「…嗚呼」
いつもは2人で囲む夕食も、今日は4人のせいか、いつもより暖かい気がした。
「朝陽あのね、お母さん…」
「母上を」
「朝陽?」
嗚呼、やっぱりな。そう思った
取られるのは少し寂しいが
やっぱり母上には。
「母上を幸せに…してやって下さい」
「っ!?…嗚呼、絶対幸せにすると誓うよ。…勿論朝陽くん。君も」
「っ!?」
母上は少し照れ臭そうにでも、幸せにはにかむ。そしてそれを包み込むように彼が、優也さんが優しく微笑みかけてくれる。
俺もこんな家庭で育ってたら、もう少し愛想良くなれたのかな、なんて。
「俺の紹介。まだかよ」
(嗚呼、なんだお前居たのか)
何気、酷いことを考えつつ俺様チャラ男に目を向ける
「この子は郁人。俺の息子で朝陽くんの一個下。つまり、朝陽くんの弟だよ。ちょっと我儘なところもあるけど、とても優しい子なんだ。仲良くしてあげて欲しい」
「はい、わかりました」
(こいつが弟とか、ないだろ)
派手な金髪。それに負けない甘いルックス。
座っていて分かりにくいが、180はあるだろう。のわりに、細身に見える。そして、チャラい。ガラが悪い。本当に優也さんの息子なのか
「コイツが兄貴?ありえねぇし。なんでこんなダッセェ奴と兄弟なんなきゃいけねぇんだよ」
「…は?」
「つか、お前もっと喋れよ。ダサくて無口とか気持ち悪りぃ」
「こっちこそ、お前なんか願い下げだ」
「はっ、そりゃどうも」
優也さんと母上が心配そうに様子を伺ってるが、こっちも我慢の限界だ。こんな奴とは仲良くできない。優也さんの息子でも、俺の弟になるやつでも。
「まぁ…郁人と朝陽くんは対照的だから初めは仲良くなれないかもしれない。けど朝陽くん、これも良い機会だと思って少しだけでもいいから気に掛けてやってくれないか?」
「…………………わかりました」
俺がそう言うと、優也さんは苦笑してしまった。まただ。
俺は良く、苦笑いをされる。
父親譲りらしいこの吊り上がった鋭く大きな目に、いつの間にか板に付いた無表情。
そんな俺を怖がって声を掛けてくれる友達なんて、居なかった。
だから余計、無口になった。
久々に喋ると、目を見開かれ。
苦笑いされる。
俺が何をしたんだろう。
勝手に畏怖の対象にされ、遠去かり、変な噂は尾ひれを付けてかけ巡る。
もううんざりだ。
喋るのも、関わるのも、目を見るのも億劫
こんな俺になってしまって、母上には
罪悪感ばかりだった。
俺が物思いにふけっていると、俺様チャラ男。もとい、郁人の口からとんでもない話が飛び出した。
「は?…なに?」
「だぁあから、親父と日和さんは明日から新婚旅行なわけ。つまり、俺とお前二人きりだ。けど、明日は月曜日。俺、学校。しかも全寮制。お前一人だと日和さんが心配らしいから、お前は俺と学校に行く」
「……俺が、お前と同じ、学校?」
「そうだっつってんだろ、バァーーカ」
母上と2人、細々と暮らしてきた俺にとって
母上と離れることはもちろん。
全寮制だなんて、信じ難いことだった。
「はぁ、わかった。編入する」
「はっ、ダセェ癖に物分かりはいいのな」
「…うるせぇ」
でも、ちょっとだけ。
口喧嘩が出来る弟ができて、嬉しい。
なんて、思ったんだ。
→
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 12