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ポテトチップスの代金
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開いた財布には5千円札しか入ってなかった。
「…。」
これを出してしまえば、とりあえず手持ちはスカンピーになってしまう…。
しかし幸希は、
(これでこの件が一件落着するなら!)
と、躊躇わず樋口一葉に手をかけた。
「じゃあ、これで…。」
幸希は押し付ける形で5千円札を差し出した。
「…。」
男も渡されるがまま札を受け取った。
(…?)
札を見つめたまま、怒ったような困ったような顔の男に幸希はどう動いていいかわからなかった。
(定食代とまぁ…慰謝料?的なもんでもかなりの儲けだと思うけど…。)
動かない男から幸希はそろそろと離れた。
「じゃあ、そういうことで…どうもすみませんでした…。」
そのままコンビニを出ようとしたが、ポテトチップスを手に持っているのに気がつき、棚に返そうとした。
「ちょっと。」
急に男が声を上げたので、幸希はビクッとして振り返った。
「…はい?」
男は幸希の持っていたポテトチップスを指差しながら、眉をひそめた。
「それ、君がさっき背中で潰しただろう?」
「あっ…。」
手に持っていたポテトチップスの袋は膨らみを無くし、明らかにヨレヨレになっていた。
「そ…そうですね….。」
(財布はスカンピー…)
頭の中はスカンピーしか回らない。
(今時の子はスカンピーなんて言葉わかるかしら?)
幸希は逃げ場を探し出せず、ついには現実逃避をしてしまった。
「はい。」
「えっ?」
目の前に先程と樋口一葉が差し出された。
男はさっきの怒ったような顔から楽しそうな顔に変わっていた。
「ほら、会計してきなよ。」
「あ、ありがとう。」
幸希は言われるがままに5千円札を受け取り、レジに向かった。
男は幸希より長い足で前を歩き、レジの中に入った。
「136円です。」
「あっ、はい。」
幸希は急いで両手で持っていた5千円札を男に渡した。
「4864円のお返しです。」
「あっ、はい。」
幸希は男から差し出されたお釣りをオドオドと受け取った。
「えっと…じゃあ、これ。」
幸希は受け取ったお釣りをそのまま男に差し出した。
「細かくなっちゃったけど…。」
ジャラジャラと小銭が落ちそうになった。
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