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嘘をつくということ
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「…。」
男は無表情のまま手元の4864円を見つめていた。
(足りなかったかな…?いやいや!多いだろう!!)
「じゃあ…俺はこれで…。」
幸希はそろりとレジから離れようとした。
(これで面倒くさい問題は解決した!このコンビニが一番使いやすかったけど…次回からは違うコンビニに行こうっと!)
幸希は足取り軽く店を出て行こうとした。
「ちょっと待って。」
ビクッとして、背筋が伸びた。
後ろから悪魔の声が聞こえてきた。
(なんなんだよ!一体!!これ以上、難癖つけるんならここは大人の恐さを…)
幸希は拳を固め、目を釣り上げた。
「なんだっ…てぃ。。」
「これ。」
勢いよく振り返ると男はビニール袋を上に掲げ、幸希を見下ろした。
「あっ…い?」
幸希は握りしめた拳の処遇が分からず、顔と身体を歪めた。
男は不思議そうな顔で袋を幸希に差し出した。
「ポテトチップス。」
「あっ…。」
袋から薄っすらと先程買ったヨレヨレのポテトチップスが見えていた。
「来週から使えるお弁当・お惣菜割引クーポンの冊子も入れといたから。」
「あ、ありがとう。」
幸希は顔を赤くしながら袋を受け取った。
(もう来ないけど!)
「あのさ〜。」
幸希が俯いていると男は一旦言葉を切った。
「?」
「なんで電話してくれなかったの?」
幸希は首を傾げ、まじまじと男の顔を見た。
そこで初めて男の目が充血してるのがわかった。
幸希は警戒するように口を開いた。
「ざ、残業…で帰りが遅くなって…で、電話するには遅い時間だったから…ね…です…」
背中にタラタラと汗が流れる。
”嘘をつく”というのがこんなにも後ろめたいなんて思いもしなかった。
幸希は携帯番号を書かれていた手を後ろに隠しながら、身を縮めた。
「で、でもこうしてまた出会えて、恩返しもできたし、よかったです!(これで俺も自由です)じゃあ、お仕事頑張って下さい。(もう二度と会う事はないだろう!)失礼します!」
幸希は営業用の喋りを繰り出し、深々と頭を下げ、その場を離れようとした。
(いち早く逃げたい!)
幸希は出口を見た。
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