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気になるあの子②
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(高校生…ではないよな…)
「あの人は一応成人だから、年齢確認しなくていいからね。」
初めて見た日、店長は慣れたように里見に耳打ちをした。
(常連さんなのか…それにしても幼い顔してるな…20歳くらいかな?)
その頃の彼は忙しかったのか、いつも10時過ぎて店内に入ってきた。
彼はいつもお弁当コーナーで10分は悩んでいた。
弁当を手に取ったり、サラダを手に取ったり、両手に持ってみたり。誰かが来れば少し身体を引いたり、インスタントラーメンのコーナーに行ったりして、最終的に自分の腕時計を見て、青くなっていつもの弁当を手にして、レジに並んだ。
「温めますか?」
そういうと彼はブンブン頭と手まで振って、
「いや、いいです。」
その姿がまた小動物のようで可愛かった。
そして、必ず最後に
「ありがとうございます。」
軽く頭を下げ、お釣りを受け取るのだ。
(礼儀正しいし、可愛い)
それからも彼はほぼ毎日のように来て、
「ありがとうございます。」
といって帰って行く。
嫌な客が来ても彼の「ありがとうございます。」があれば嫌な気分も吹き飛んだ。
彼を真剣に意識し始めたのは、バイトに入っていた女の子が、彼がレジに持ったきた弁当を会計した時のことだ。
(残念….俺がレジしたかった)
里見はちろっと舌を出して、店長から頼まれていた新発売のソフトクリームのPOPを天井から吊るしていた。
「きゃあっ!」
悲鳴が上がり、里見が悲鳴の方向を見るとバイトの子が青くなっていた。
よく見ると多分、彼が持ってきたんであろう弁当が床に落ち、ひっくり返っていた。弁当は綺麗に回ったのか、中身は出てはいなかったが、上下か反対になって落ちていた。
「…。」
彼もびっくりしたようで、2人で突っ立っていた。
「す、す、すみません!新しいのと交換します!」
しばらくして、ようやくバイトの子が口を開き、カウンター内から出ようとした。
里見も駆け寄ろうと脚立を降りようとした時、彼は身を乗り出して、カウンターの内側を覗いた。そこには床に落ちた弁当が見えたはずなのに彼はニコッと笑った。
「いいよ。セーフだから。ひっくり返って、床に落ちただけでしょう?中身は出てないから、それでいいよ。」
「で、でも…。」
「いいよ。食べれば一緒だし。」
あわわわしているバイトの子に彼は屈託なく笑って返していた。
「しかし、お客様…」
里見は2人に割って入るように声をかけた。
「ん?」
目が合ったのはこの時が初めてだった。
今まで、彼は大体俯いて、顔を上げてることはなかった。
初めて真っ正面から彼を見ると、その可愛さにドキリとした。ビー玉みたいな丸い目に手で収まりそうなくらいの顔の小ささ。
(女の子みたいだ…)
少し言葉に詰まった里見に彼はニコッと顔を緩めた。
「いいんですよ。これ、最後の唐揚げ弁当だったし。」
「…じゃあ、返金を。」
「食べるんだから返金なんてしてもらう必要ないよ。」
彼は青くなったままのバイトの子を見て、優しく笑いかけた。
「気にしなくていいよ。誰だって失敗するんだから。てか、こんなの失敗の内に入らないよ。」
「で、でも…。」
「えへっ。今日、俺も職場で失敗して、先輩からそういわれたんだ。だから…ね!」
その”ね”っで完全に落とされたんだと思う。
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