アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
病院の部屋
-
真っ白い…真っ白いしかいいようがなかった。
「頭痛くないですか?どこか痛みはないですか?」
勝谷の長い指が軽く幸希の頭を撫でた。
「う、うん。特には…。」
「そう、よかった。」
勝谷はホッとした表情で、ベッドの脇に腰をかけた。
「なんで?君が…てか俺は?ここは?」
起き上がろうとする幸希を勝谷が制止した。
「駄目ですよ。頭を打ったんですから。」
(頭…?)
幸希の頭につい先程の光景が再生された。
「あっ!!そうか!」
「シッー。ここは相部屋ですから。」
「あっ…。」
幸希は大慌てで、口を押さえた。
すると勝谷は意地悪そうに笑った。
「まぁ、今この部屋には雨宮さんしか入院してないんですけどね。」
「…おい。」
「ごめんなさい。でも頭を打って、脳震盪を起こしたのは本当です。」
「じゃあ…事故を…?」
幸希の頭に保険会社や始末書などが思い浮かび、青ざめた。
「いえ、ぶつかってはいません。両者無事でした。雨宮さんだけが急ブレーキをかけた時に頭を打ったようで、その際、脳震盪を起こして、救急車でここに運ばれたんです。」
「俺だけ…?」
「担当医の話では、身体的に弱っていたのが重なった為、軽い脳震盪を起こしたんではないかとのことです。」
(あっ…最近、飯食ってなかったからな….)
何か言いたげな勝谷の目から逃げるように幸希は口を開いた。
「か、金田くんは?」
勝谷はベッドから立ち上がり、そばにあった椅子に座りなおした。
「金田さんは現場に残ったようです。」
「で…なんで君が?」
勝谷は手を顔の前で合わせて、前のめりになった。
「実はあの自動車教習車に乗っていたのは楷だったんです。」
「楷くん!?」
あのノロノロ蛇行運転を思い出す。
「楷から電話があって、雨宮さんが救急車で運ばれたから病院に向かってくれっていわれたんです。金田さんは車もあったから、現場に残らなくてはならなかったそうです。ですが付き添いが必要だってことで、俺に電話があったんです。…偶然でも相手が楷で良かったです。楷も雨宮さんだったから、俺に電話できたし…。」
ギシリッという音と共に勝谷はパイプ椅子の背もたれに身体を預けた。
「あ、ありがとう…。」
明かりはベッドの脇の小さなスタンドライトだけだった。
「今、何時?」
勝谷は腕時計を見た。
「10時ですね。」
「10時!??」
「大分眠っていたようですね。」
「えっ?えっ?」
「7時ごろ、会社の木下さん?と若い女の人が来ましたけど、大したことないって知ったら、あとよろしくといって帰って行きましたよ。」
「はっ?えっ?」
「一緒に来てた女性は一緒に付き添うと駄々こねてましたけど。」
「竹下さんかな…?よかった…帰ってくれて。いや!そうじゃなくて、君が…勝谷くんがなぜこんな時間まで…付き添ってくれてるんだ?」
「俺は弟ということで付き添っています。」
「はぁっ!?」
幸希は勢い余ってベッドから身体を起こした。
「だから駄目だってば。」
勝谷は笑いながら立ち上がって、幸希の肩を押した。
「いやいやいやいや…だって…。」
「そうしたほうが都合が良かったんですよ。家族の連絡しようにも携帯に登録なかったから、病院の人が困ってましたから。木下さんが来たのも雨宮さんの緊急時の連絡先が今は使われてない番号だったから、自分が付き添おうと思っていたそうです。」
「木下…。」
急にあの眼鏡に会いたくなった。
しかし、ふと考えて、再びブスッとした顔になった。
「…でも…なんで竹下さんと来たんだよ。」
「まぁまぁ、俺がいますから、大丈夫ですよ。」
スタンドライトのぼんやりした明かりのせいか、勝谷はいつもより疲れてる感じに見えた。
(…俺、この子にひどいこといったんだよな…)
幸希は罪悪感なのか今いてくれることに感謝したいのかわからないが、泣きたくなってきた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
69 / 151