アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3度目の相手
-
台風20号が来ているとニュースでいっていた。
窓の外はここ何日も雨が降っていた。
「前に会った時も雨でしたね。」
幸希は振り返らずにシャツに腕を通した。
「あの時は横取りされたと思ったら、返って来ましたからね。あれはびっくりしました。」
「…」
「最近、あのお店にも顔出してないみたいじゃないですか?マスターが「最近、遊びに来ない」ってボヤいてましたよ。雨宮さん目当ての客もいて、あしらうのが面倒だって言ったましたよ。」
幸希はスボンにベルトを巻いた。
「ふっ…雨宮さんは本当に僕を手玉に取りますね。今まで、僕にそんな態度をとった女の子もいなかったよ。」
幸希は動きを止め、顔だけ後ろに向けた。
「…柏原君は両刀(バイ)だっけ?」
半裸のままベッドに寝そべり、枕を抱える柏原は愛想よく笑った。
「えへっ☆はい。今んとこ本命はマキちゃんっていう受付の子です。みんな狙ってるんですよ☆」
幸希は2回以上は同じ相手と寝ないと決めていたが、柏原の正直で気を遣わない所が気軽な相手に向いていた。
「じゃあ男と寝ている場合じゃないだろう?マキちゃんと寝ろよ。」
幸希はクスクス笑いながら、ベッド脇のサイドボードに置いていた携帯と財布に手を伸ばした。
「でも…」
幸希のその手を遮るように上から柏原が手を重ねてきた。
「本命、変えようかな。」
「誰に?」
幸希が手を払おうとすると柏原はその手を握りしめ、自分の方に引き寄せた。
「雨宮さんに。」
人懐っこい笑顔に幸希はつられて笑った。
「俺に?なんで?」
「だって雨宮さんは脈ないと思ってたから、諦めてたんだよ。でも今日も誘ってくれたし。マスターが雨宮さんは同じ相手と寝ないっていってたから、少しは脈あるのかな〜って思って!」
幸希は空いた片手で柏原のおでこを叩いた。
「イテッ。」
「アホか。健全にマキちゃん誘っとけ。」
「本気だよ〜。あのお店で雨宮さんの事、ずっと狙ってたし。」
ついでに握る柏原の手をバチンと叩いた。
「イテッ!痛いよ〜。」
柏原が大袈裟に痛がったので幸希はクスッと笑った。
スーツを着ている時の柏原はスマートで、エリートサラリーマンのようだ。しかし、服を脱いだ柏原はとても子供っぽく見える。
(あの子の方が年上に見えるな…)
「雨宮さん?」
「えっ?」
不思議そうな顔で、柏原が覗き込んでくる。
「な、なんでもない!」
(何考えてんだ、俺は!?)
幸希は慌てて携帯に手を伸ばし、ポケットに入れた。
「ずっと聞きたかったんですけど…」
「なに?」
「あの背の高い男の子って、雨宮さんのなに?」
ドキリ
幸希はピタリと動きが止まった。
「恋人?」
幸希は動揺しないように手首に時計を巻こうとした。
「違うよ!何いってんだよ!!あれは…いっただろう?お金借りてた知り合いって!偶然会って、取り立てられてたって!」
「僕、あの時はへぇ〜って言いましたが、よくよく考えるとあの子、僕より若い感じでした。そんな子に借りたんですか?」
「…」
幸希は何の考えも浮かばず、黙り込んだ。
「えっと、、、困らせるつもりはないんです。ただ…マスターが雨宮さんは恋人でもできて、店に来なくなったんだって言ってた時、あの男の子が頭に浮かんだから…。」
幸希はすぐに頭を振った。
「違うよ!勝…あの子は普通の子だ!可愛い彼女がいるんだ!勘繰らないでくれ!彼が迷惑だよ!」
「そ、そうなんですか….。」
幸希はハッとした。
「ごめん…もう、俺とは関わらない方がいいよ。君も普通に女の子と付き合え。」
幸希は財布から、1万円札を2枚出し、サイドボードに置いた。
「あ、雨宮さん!?」
雨の音が強くなってきた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
79 / 151