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受け入れない思い
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家に着いたのは20時過ぎ。
広い玄関を開けると
飼っている白猫のリリィが
僕を迎えてくれる
「ただいま。」
足に擦り寄るリリィを抱えて
リビングに足を運んだ
真っ暗な部屋に明かりを灯すと
ラップを掛けられた夕食が置かれていた。
僕の親は母さんが医師
父さんは全日制高校の理事長
どちらも多忙な仕事の為
ほとんど家に要ることがない。
ただ、母さんは家に帰っては
必ず僕の為に食事を用意してくれている。
「・・・・」
だが、毎回僕はそれに手を付ける事なく
そのまま二階へと上がる。
「・・・・はぁ。」
制服を脱いでハンガーに掛け
部屋着に着替えた後
リリィとベッドに寝転がった
「・・・・」
放課後の、成海の言った事
新が僕に思いを寄せていたということ
その日の出来事が頭を過る
人を好きになるなんて
そんな事が簡単に出来る訳がない。
一時の感情に身を左右されたら
その後の人生に大きく影響を及ぼしてしまう。
自分に負があるだけだ。
恋愛なんて くだらない。
そんな事を思っている時、
リリィが顔に擦り寄ってくる。
「・・・よしよし」
喉を鳴らし、首元に丸くなる
猫は好きだ
気まぐれな分、自分にだけという
感情は、最初から持ち合わせていないのだから。
自分以外の他の誰かの元へ掛けていっても
別に傷付くことはない。
“ 会長 ”
突然、新の顔を思い出した
「・・・・・新」
傷付けてしまった。
僕に懐いてくれていたのに
きっと心から・・・慕ってくれていたのに
「それでも僕は・・・・」
その時、玄関から扉が開く音がして
リリィが僕のそばから離れ
一階へと降りて行った
父さんだと。すぐに分かった。
「樹。帰っているのか」
「・・・・」
「下に来なさい」
そうやって、毎日呼び出されては
学校での活動報告とその日の
出来事を父さんに告げる
重い体を起こして僕はまた
リビングへと足を運んだ。
「おかえりも言えないのか。」
「・・・おかえりなさい」
「座れ。」
親子とはいえ、父さんが
僕の通う理事長をしている限り
学校での言葉遣いは敬語。
そのせいで今ではすっかり
家でもその話し方になる。
親子だなんて感覚が全くしない
家でも常に父さんの目が僕を監視する
「樹、最近の事だが」
「はい」
父さんがゆっくりと口を開く
「最近の生徒会は仕事の進みが悪い。
副会長の上城君も授業を
よく休んでいると聞いたよ。
彼には先日きつく注意しておいたが」
成海を父さんが呼び出したのは
僕が外部訪問に出ていた日
その日の新を思い出した。
生徒会室で、淫らな声を漏らし
僕によがる新の姿
「樹。聞いているか?」
「は、はい・・・その件は
僕からも成海に話しておきます」
「ああ。」
「・・・・・」
「・・・・・」
そして続く沈黙
ほんとに疲れる。
この重い空気の中で父さんの
言葉を待たなければならない。
「それと、樹。
昨日、お前が持ってきた資料の中に、
いくつか記入漏れがあった。」
「え・・・」
「私が修正しておいたが、あれは大事な書類だ。
今後あの様なミスはするな。」
この僕が・・・仕事にミス?
「失望させるなよ。私の子なのだから」
「すみません・・・今後
この様な事のない様に気を付けます」
「ああ。それと、母さんが作った食事は
きちんと食べなさい。」
そう一言添えて、父さんは自分の
寝室へと入って行った。
「・・・僕が?」
生徒会長になって、今まで
一度たりともミスなんてしなかった。
それなのに・・・・
「・・・あの日・・・」
あの日は、新の肌にキスをした日
新に沢山触れた日・・・
「っ・・・違う。」
それが原因じゃない
僕の不注意が招いた事だ
決して、新と居る時間に
浮かれていた訳じゃない
心臓が騒がしい。
「なんだ・・・これじゃ・・・
影響されているのは僕の方じゃないか」
これだから、恋愛なんて
「・・・くだらない」
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