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それが貴方の幸せなら
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朝の7時15分・・・
今日はいつもの時間よりも早く学校に来て
いつものように生徒会室に足を運んだ
新との約束の時間まであと15分
生徒会室のカーテンを開いては
窓を少しだけ開けた
冷たい風が体を覆い
部屋に差し込む日差しに目を細めて
会長机の椅子に腰を掛けた
「寒いな・・・」
こんなに早くに呼び出してしまって
また新が風邪でも引いたらどうしよう
なんて、そんな事が頭を過っては
また一つの後悔を思い出す
保健室で、新の気持ちを拒んだ時の自分
「・・・ほんとに、後悔ばかりだな・・・僕は」
だけど、もう後悔はしたくない
そして今日こそ
ちゃんと新の気持ちを受け入れる・・・
「・・・新」
今日、僕は新に振られる
その事は、前から分かっていた事なのに
寸前になっても、やっぱりまだ胸が痛む
あれ程覚悟を決めたのに
「やっぱり少し・・・怖い、かな」
そう考えると、手が震えてきた
その手を握り締めては
目を閉じて心を落ち着かせる
「・・・・・」
新がこの生徒会室に来る時は
毎回新は、色んな表情をして扉を開く
「・・・・・・今日はどんな顔をしてるかな」
手の震えを止めて
背もたれに体を預けて、天井を見上げた
その時、時間よりも5分早く
生徒会室の扉が開いた
「・・・し、失礼します」
ガラリと扉が開いて、
僕はその方へと目をやった
朝日が照らす光を通して、新の姿が僕の目に映る
「おはよう」
そして、その新の表情は
「おはようございます」
もう、迷いのない真っ直ぐな顔
「・・・・会長・・・返事を、しに来ました」
僕の前に歩いて来て、新はそう言った
新の目は少しだけ赤くなっていて
頬に涙を流した後があった
「うん・・・聞かせて?」
また、あいつを思って泣いてたのかな
「か、会長・・・俺」
ぎこちなく、言葉を言い始めた新の顔をじっと見つめると
新は少しだけ下を向いて
また顔を上げて凛とした目で僕を見た
「俺、会長の事が好きでした」
「・・・・・え」
いきなり、新ははっきりとした声でそう言ったから
僕は少し驚いて目を見開いた
「俺、初めて人を好きになったんです・・・
顔を見るだけで・・・幸せな気持ちになれたり
声を聞くだけで胸が、ドキドキしたり」
言葉を次々に繋ぐようにして
新は話し続けた
「は、初めて人を好きになったから
そのきっかけなんて単純で
ただ単に、優しい会長を俺は好きになりました」
「・・・あ、新?」
「だからっ、会長に何が好きなんだって聞かれた時、
何も言えなくなって、
会長を突き離しては、勝手に傷付いて泣いたりして・・・」
「・・・・・っ」
どうしていきなり、そんな事を
「でも、俺が会長に抱いた気持ちは
勘違いなんかじゃないって、今でも思います」
ただ、新が僕に何かを
伝えようとしてくれているのは分かる
真っ直ぐなその言葉が、
ジンっと胸に響いてくる
あんなに酷い事を僕はしたのに
新は僕に向けた気持ちは
決して間違いなんかじゃないと
言ってくれてるような気がして
「か、会長が俺の事、好きだって言ってくれた時は
う、嬉しかったです・・・」
「・・・・今でも好きだよ?」
「・・・っ・・・は、い・・・」
僕がそう言うと、新は顔を赤くして
少し下を向いては黙ってしまった
「・・・・・で、でも・・・今は・・・俺」
「・・・・・」
その新の表情を見て
ふっと笑みが零れた
「・・・成海が・・・好き?」
「・・・っ」
またそう聞くと、新は手に力を入れては
コクっと頷いた
「は・・・い・・・す、好き、です」
「・・・・・」
「俺、・・・あいつの事が・・・」
あんなに聞きたくなかった言葉なのに
今の新の表情は、ずっと僕が見たかった顔をしてる
「成海と居ても、新は傷付くだけかもしれないよ?」
「そ、それでも・・・好きです」
「もう成海が新を必要としてなくても?」
「・・・・・す、好き、です」
一つ一つ、そう聞いては、新は小さく答えた
「・・・・・」
どうしてかな・・・
絶対に、成海には渡したくなかったのに
今の新の顔を見たら
「そっか・・・」
別の気持ちが込み上げてくる
「か、会長?」
椅子から立ち上がって
新に近付いて、腕を掴んで引き寄せて
その小さな体をそっと抱き締めた
「ちょっ、か、会長っ!」
「少しだけ・・・このままでいさせて」
「・・・っ・・・か、会長」
少し戸惑う新から、
トクトクと鼓動が伝わってくる
小さくて荒々しい、僕の好きな新の音
「僕も好き・・・だったよ」
「・・・・え・・・」
そして、そう呟いて新の額にキスをした
「えっ、あ、会長っ?」
「ふふっ・・・・・・顔、真っ赤」
「・・・っ」
なんだろう。この感じ
「ありがとう。新」
「え?・・・な、何が・・・ですか・・・?」
「ううん・・・なんでもないよ」
新の気持ちを聞いたら、
きっと胸は苦しさを増して
手の届かなくなる事が酷く怖いと
そう思っていたのに
「好きだったよ・・・
ほんとに・・・・・・大好きだった」
「・・・・は、い・・・俺も」
僕がそう言って抱き締めると
新は背中に手を回して
ぎゅっと、抱き締め返してくれた
「好き・・・だったよ・・・」
「・・・・はい・・・」
失うのが怖かった
新が、誰かのモノになってしまうのが
あいつの元へ行かせるのが嫌だった
けどそれは、自分が幸せになりたくて
僕が新の一番になりたいと思う一心で
その勝手な思いが君を苦しめてしまっていた
縛り続けていたあの時は
傷付けていると自覚がありながら
どこかその状況に可能性を抱いて
新が振り向いてくれるのを待ってた
でも、心は痛む一方で
ほんとはずっと苦しかった
「か、会長?」
だけど、今は・・・凄く心が暖かい
「新、成海の所へ行っておいで」
「え・・・・」
そうか
この気持ちはきっと
「きっと、大丈夫だから」
好きな人の 幸せを思う気持ち
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