アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
初恋は
-
新が出て行った後、
僕はまた椅子に腰を掛けては
はぁっと息を漏らした
「・・・これで良かったんだよね」
最後に、新が僕に言ってくれた言葉は
僕の心を軽くするには十分過ぎる言葉だった
「・・・・・・・で」
暫くまた天井を見つめた後、
「いつまで隠れてるつもり?」
生徒会室のソファに向かってそう言った
「あら❤︎バレてましたか❤︎」
勢い良く立ち上がって現れたのは
黒髪のツインテール。赤い眼鏡を掛けた・・・
「・・・舞園」
にこにこと笑っては、
束になった資料を片手に
舞園は僕の方へと近付いて来た
「ふふっ❤︎今回は気付かれないと
思ったんですけど❤︎」
「本当に、君は神出鬼没だね。」
新が出て行った後、少し物音がしたから
まさかとは思ったけど
「そんな褒めないで下さいよ❤︎」
「褒めてないよ」
本当に、今は一人になりたいのに
「それよりも、会長、良かったんですか?」
ため息を零していると、
舞園がそんな事を言ってきた
「・・・なにが?」
「書記君の事ですよ!
良かったんですか、行かせてしまって」
「・・・・・」
ほんと、いつからそこに居たの・・・
「・・・新がもし、ここに来る時
少しでも成海への気持ちの迷いがあったら、
僕は行かせてなかったよ。」
「??」
「・・・・・」
新の中には、もう迷いなんて無かった
そんな新の心の中に、僕が踏み込む隙なんて
「とにかく、もう終わった事だから。」
「えぇ〜!残念です!
わたしは、書記君と会長がくっついて欲しかったのにぃ〜!」
頬を膨らませながら、
舞園はそう言った
そのセリフ、デリカシー無いよ舞園
「ふふっ❤︎けどまだ楽しめそうですね❤︎」
そして、また嬉しそうに笑っては
舞園は何かを思いついた顔をした
「舞園、もう新に変なちょっかいを出すのは辞めてね。」
そんな舞園を少し睨むと、
舞園は慌てたような顔をした
「ひ、酷いです!そんなつもりないのにっ!」
大声で僕に言い返しては
舞園のキンっとした声が頭に響いた
「静かにして。頭痛くなるから」
「それも酷いです〜!」
まるで僕の事を聞かないで
大きい声のトーンのままそう言っては
舞園は資料をドサっと机に置いてきた
「で、なにこれ?」
「文化祭の演劇のアンケート結果です❤︎
今年は随分評価が高かったですよ❤︎」
舞園に渡された資料を一枚取ると
そこに書かれていた内容に目を通す
「・・・・文化祭か」
その日の出来事が、一気に頭を過る
「・・・・会長?」
「・・・・・・」
どうしよう
もう、終わったはずなのに
「会長ぉ〜?」
これからは、良い先輩として
ちゃんと新の側に居れるのに
「・・・・っ!?」
考え込んでいると、いきなり視界が揺らいで
何かと思えば、舞園が僕に
自分が着けていた眼鏡を掛けてきた
「ま、舞園?」
「会長、わたし正直言って
視力は副会長より悪いです」
「・・・?」
いきなりそんな事を言い出しては
舞園は僕に背中を向けた
「それ、貸してあげます。」
「・・・?別に僕、目は悪くないよ?」
不思議に思い、眼鏡を外そうとしたら
その手を舞園は止めてきた
「だから、わたしは今何も見えてません」
「・・・?」
そう言って僕から手を離すと
舞園は大きく息を漏らした
「あ〜あ!会長の顔も霞んで見えないし、
泣くなら今だと思うんですけど」
また背中を向けては、
舞園は少しワザとらしくそう言った
「・・・別に泣かないよ」
「わたし、見えてませんから」
「・・・・・」
またそう言っては、
舞園は黙ってしまった
その舞園の背中を見ると、
少し笑ってしまった
「・・・そうか・・・見えてないのか」
「はい。全然これっぽっちも見えません」
舞園なりに、気を遣ってくれてるのかな?
「・・・・舞園」
「なんですか?」
女の子の居る前で、泣く訳・・・
「僕・・・初めてだったんだ」
「・・・・・」
泣いても、いい事なのだろうか
「初恋・・・だったんだ」
「・・・・・」
酷い事を沢山して
何一つ好きな人の為に出来なかった
ただ、初めてのその気持ちを
どう制御するかも分からなくて
さっきだって、好きだったと言っては
心の中では好きだと何度も新に言った
まだ、こんなにも新が好きで
大好きで、愛しくてたまらないのに
もう、二度とその言葉を口に出来ないと思うと
また、胸が苦しくなる
「・・っ・・・本当に駄目、だね・・・僕は」
ちゃんと、押さえなくちゃいけない
新の幸せを一番に思ってあげたいのに
最後に新の為に取った行動でさえも
正しかったのかと不安で
もしもあのまま成海の元へ行かせて
成海が新を拒絶したら
新はまた酷く傷付くんじゃないのかと考えると
「会長、初恋は実らないものですよ」
「ははっ・・・厳しいね」
度の合わない視界の中で
舞園の言葉が心に染みてくる
「初恋が実らないのは
その気持ちに対してどう動いていいか分からないからですよ。」
「・・・・・」
「だから、お互い、すれ違い思い違っては
その失敗を得て、次の恋に生かすんです」
「・・・・・次・・・」
また、こんな思いをする日が来るのかな
そう簡単に、新を忘れれる日は来るのだろうか
「会長はきっと、良い人に出会えますよ❤︎」
「・・・・良い人ね」
舞園の言った言葉に、少しだけ
胸が熱くなった
だけど
「・・・ありがとう」
胸に手を当てて、服をぎゅっと掴むと
僕の心の中にある新の存在が
また胸いっぱいに溢れてくる
「でも暫くはいいよ・・・もう少しだけ
この気持ちに浸っていたいから」
笑って僕を呼ぶ新の顔を
頭に思い浮かべると
「・・・・っ・・・」
幸せな気持ちになって
少しだけ涙が零れた
「・・・・新」
だからどうか
君には幸せになって欲しいと
今なら素直に思えるよ
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
148 / 617