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やっと・・・
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テスト期間に入って三日が経った。
そして何故か昨日
秋人君は僕を迎えに来なかった。
校門で僕を待っていたのは
先日知り合ったつっちーさんだった。
つっちーさんは、秋人君に頼まれたからと言ってたけど
結局、何で迎えに来れなかったのか
秋人君に理由は聞けなかった。
昨日の帰り道はとにかく緊張の連続で
向こうは楽しそうにカワちゃんさんの話をしてたけど
僕は相変わらずビクビク震えながら家まで送られた。
ご丁寧に連絡先まで交換され、
ほんとにもう最悪だった。
また一人、僕の携帯に不良の名前が刻まれた。
「大崎?お前顔色悪りぃぞ?」
「・・・・」
お昼休み、昨日の事を思い出していたら
横から僕の顔を覗き込んで渋谷君が声を掛けて来た
「具合悪りぃのか?保健室行ってこいよ」
「や、あ・・・大丈夫です」
「なんで敬語?」
「・・・な、なんとなくです」
「??」
渋谷君の事を聞いたあの日から
僕は完全に壁を作ってしまった。
不自然な喋り方になるし挙動不審になる。
そんな僕を渋谷君は不思議そうに見てくる。
不良と知ってから、その目がより怖くなったよ。
「まぁ、無理はすんなよ」
目を合わせないようにして机をじっと見つめていたら
渋谷君は心配そうにそう呟いて
自分の席に戻って行った
心配・・・してくれてるのか
いや
「・・・だ、騙されないぞ」
僕は席を立って廊下へと出た。
飲み物でも買って来よう。
教室に居ると、渋谷君という存在の重圧に耐えきれない。
君はあの悪名高き鷹中の元不良なんだ
今がいくら真面目だったとしても
過去の前科が消える事はない。
君がいつ本性を表して僕に殴りかかって来るか・・・
そんな事に怯えながら、
僕はこれからを過ごさなくてはいけない
いやいっそのこと本性をバラしてよ
派手に暴れ回って先輩に嫌われてよ
生徒会からも、君さえ居なくなれば・・・
「っ・・・何を考えてるんだ僕は」
そんな事が頭に流れ、自分で自分が嫌になる
でも、渋谷君の事を知ると
前にも増して劣等感が強く溢れてくる
「だって・・・おかしいだろ」
散々不良の道を歩んで来た君が先輩に好かれて
正しい道を歩んで来た僕は
不良の輪の中へと引きずり込まれて行く
先輩から・・・どんどん遠くなる
「・・・・・・・先輩」
「大崎」
「!?」
ボソっと先輩の事を呟いたら
その瞬間名前を呼ばれ、
僕を呼んだ声に体がビクっと跳ねた
「ちょっといい?」
「ふぇ?」
やがて、僕は声のする方へとゆっくりと振り返った
ドクンと、大きく心臓が唸る
「せ・・・」
そこに立っていたのは
「先輩っ」
僕が、本当に思いを寄せる人
「ど、どどどどどうしたんですか?」
先輩が僕に話しかけてくるなんて!
緊張が一気に体を巡って、変な汗がダラダラと流れた
テスト期間に入って生徒会の活動がお休みになってたから
久しぶりに先輩の顔を見ると
すぐに顔が熱くなっていく
バックバックと、また鼓動が早くなる
「ん。あのさ・・・急で悪いけど」
「〜ッは、はいっ!!」
ダメだっ
先輩と二人で話すなんてっ
き、緊張し過ぎて口から内臓がっ
ボボボッとまた顔が熱くなった時
先輩は口を開いた
「あの時の、告白なんだけど」
「・・・・・・・ぇ」
こ・・・告白?
「返事。随分待たせて悪かった。」
待って・・・告白って
あの体育館裏での?なんで今になって
「せ、先輩・・・」
「好きな奴が居るから。大崎の気持ちには応えられない。」
「へ?」
何の話かと思ったら、先輩はあの時の
僕の告白の返事だと言って・・・
そして今・・・多分、僕は振られてる
「ごめんな。今更返事する事になっちまって」
ごめんと言った先輩は
僕に向かって頭を下げて来た
「あ・・・い、いえ・・・そんな・・・」
先輩が、頭を下げるなんて
「だ、大丈夫ですよっ・・・
僕の、事は・・・気にしないで下さい」
何を期待してたんだ
先輩から声を掛けてもらって
嬉しいと思った自分が恥ずかしい・・・
頭を上げて下さいと言っても
先輩は中々頭を上げなかった
そこまでしなくてもいいのに
「それに・・・僕、彼氏・・・い、居ます・・・から」
「え?」
「だ、だからっ・・・謝らないで下さい・・・」
全然頭を上げない先輩を見て
咄嗟にそんな事を言ってしまった
「そうなのか?」
「は、はい・・・」
「・・・・・そっか」
「・・・・・」
ようやく先輩は頭を起こして
少し笑って、僕の頭に手を置いて来た
「ふぁっ?えっ?」
先輩の手が頭に触れると、また心臓が・・・
「なら、安心した。」
「・・・・っ・・・はい」
頭を優しく撫でながら、先輩は笑った
僕に初めて笑い掛けてくれた・・・
初めて・・・触れてくれた
「じゃ、じゃあこれで失礼します」
嬉しい。嬉しいのに・・・
「うん」
ダメだ泣きそう(汗)
早く先輩の見えない所に行かないと・・・
「大崎」
「へっ!?」
背中を向けて、走って行こうとしたら
先輩に呼び止められた
涙が溢れそうになるのを我慢して
ゆっくりと振り向くと
「ありがとう」
「・・・・・・・」
先輩は、優しく笑ってそう言った
「は・・・はい」
小さく返事をして、一目散に走り出した
「っ・・・」
飲み物なんて、買いに来なければ良かった
教室から自動販売機まで約五分
そのたった五分間の中で僕は呆気なく振られた
こんなに簡単に終わってしまった
しかも、彼氏がいるなんて言ってしまって
「・・・な、なにが彼氏だよ・・・」
教室には戻らず、僕は保健室に入った
さっきの一瞬の出来事が
頭の中に広がって胸を締め付けてくる
「わ・・・分かってたじゃないか・・・
最初から、振られるのなんて・・・」
先輩が言った 『好きな奴』
それは、渋谷君の事・・・
「ほんっと・・・最悪過ぎるよ・・・
なんで君なんかが・・・」
ベッドに体を倒して、そのまま布団をぎゅっと握った
先輩は僕の告白の事なんか忘れてると思ってた
でも、ちゃんと返事をしてくれた・・・
やっと・・・この恋を終わらせれるんだ
根暗の僕には叶わない恋でしたよ。
結局何も出来ずに終わったんだ
本当に無力だったな。僕は
「はは・・・振られちゃった・・・ょ」
また、布団を強く握り締め、枕に顔を埋めた
保健室の先生が留守にしてて良かった・・・
「・・・っ・・・ふぇ・・・」
やっと、思いっきり泣ける
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