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やりたい事
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焼き上がった目玉焼きを
キラキラと目を輝かせて新は見つめる
包丁片手に
「・・・・」
「・・・・」
フライパンに乗った目玉焼きを
何故か俺は背中に隠した
すると新は少し眉を歪め俺を睨んで来た
「おい、何してんだよ」
いや、こっちが聞きたい
本当に新は料理をした事が無いらしい
包丁の持ち方がもはや殺し屋だ
「あのさ、一応聞くけど。その包丁どうするつもり?」
「は?」
俺がそう聞くと、新は包丁に視線を向けた
「切るんだよ」
いやだから何を切るんだ?
お前のその目は真剣そのものだろ
目玉焼きを切る目じゃねえだろ
「一緒に作るんだろ」
「え?」
「最後くらい、俺に切らせろよ」
「・・・・・」
どうやら切るつもりなのは目玉焼きのようだ
当たり前だけど
「はぁ・・・・」
「??」
肩の力を抜いた俺を見て、新は不思議そうに首を傾げた
「目玉焼き欲しさに俺を殺すのかと思った」
「はぁ?なんだよそれ」
まぁ、そんな事思ってないけど
ちょっとからかってみたくなった
「別に俺はいいぜ?お前になら殺されても」
ニヤニヤ笑いながらそう言ってやると
新は目を見開いて眉毛を釣り上げた
「こ、殺さねえよ!
お前を殺したら来世まで恨まれそうだしな!」
「へぇ。分かってんじゃん」
「っ、とにかくっ!目玉焼きよこせ!」
「別に分けなくていいよ。お前が食べろよ」
そう言ってフライパンを差し出すと
何故か大声で『違う』と言われた
「や、やってみたい事がある」
「??」
やってみたい事?
「いいからっ、早く目玉焼きよこせよ」
「・・・・」
顔真っ赤にして、上目遣いでそう言われ
俺は不覚にもキュンとしてしまった
「絶対見るなよ!目ぇ閉じてろよ!」
「はいはい」
俺を無理矢理椅子に座らせ
大声で怒鳴られ俺は目を閉じた
だけど慣れてないのに包丁を使う新が心配で、
俺は薄っすらと目を開けて新の行動を伺っていた
背中で隠れて新の手元が見えない。
新が包丁を振り上げると
ハラハラして目を全開に開いてしまった
そして、ダンっ!とまな板に包丁が叩きつけられた音がした
同時に、ぐちゃっと生ものらしき物が切れる音
「おいっ!新!」
まさか指でもを切ったんじゃっ
そう思い俺は新の肩を掴んで手元を覗き込んだ
「うわっ!てめっ、見るなって言っただろ!」
「・・・・ぁ」
だけど新の指は何ともなってない
それどころか、綺麗に二等分された目玉焼きが
さっき焼いた食パンの上に乗っかってる
「・・・新」
「あ?んだよ」
やりたかった事って・・・
「眼鏡、ジ◯リって知ってるか?」
「え」
俺の方へと振り向いて、物凄いドヤ顔をされた
「ジ◯リの名作ラ◯ュタでな、こうやって
食パンの上に目玉焼き乗っけて食べるシーンあるんだよ」
「うん」
「ジ、ジ◯リの中のご飯ってさ
異常に美味しそうに見えるよな?」
「え?う、うん?」
「だから・・・その・・・」
「・・・・」
「・・・・・・」
途中まで言いかけて、新は下を向いてしまった
さっきからずっとモジモジしてて
やがて目玉焼きが乗ったパンを俺に差し出して来た
「ら・・・ぴゅたしよう」
「!?!?!?」
その時、俺の脳裏にはラ◯ュタのed曲が流れた
「やりたかった事って、これ?」
平常心を保ちそう問いかけるが
正直今すぐ部屋へ連れ込みたい
一緒に食べようではなく
新が選んだ言葉は『らぴゅたしよう』
なんだそれ。意味分かんねえよ
らぴゅたしてやるよ
「あっ!食べ方もな、ちゃんとあるんだぞ!」
「ほう。どんな食べ方?」
朝食を食べるよりお前を食べたい
「先にな!目玉焼きを一気に食べるんだ!」
「へぇ」
押し倒したい衝動を何とか抑え込み
子供の様にはしゃぐ新に相づちを打って返す
「ほぅはっへは、はへふんは(こうやってな、食べるんだ)」
「っ、//////」
ラ◯ュタ風の食べ方を目の前で実践した新は
言葉の通り目玉焼きだけを一気にほうばった
その顔がハムスターに見えて
可愛くてしょうがなかった
「ゴクっ・・・ほら、お前もやれよ」
そしてその食べ方を俺に共有してくる
「俺にハムスターになれと?」
「は?なんだよハムスターって」
「・・・・いや、何でも無い」
真剣な顔で返されたから
ここはやるしかないと思い
俺も目玉焼きを先に食べた
ちゃんとフォークとナイフは使ったけど
「ん。食べたぞ」
目玉焼きを先に食べ終えると
新の顔がパッと明るくなった
「満足か?」
「お・・・・っ別に」
嬉しそうに返事をしようとして
咄嗟にいつもの様にツンツンし始めふいっとそっぽを向いた
「ふっ」
「何笑ってんだよ」
「別に」
俺の事散々ガキって言うくせに
お前の方が数段ガキだろ・・・
けど、たまにはこういうのも良いな
くだらねえ事が結構面白かったりする
少し笑ってみせると、新も笑い返してくれた
そして二人して、視線を目の前の皿へと落とした
「・・・・・・」
「・・・・・」
残されたのはこんがりと焼き目がついた
ただの食パンが二枚
一気にその場がシンと静まり返った
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