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震え
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眼鏡の家を出て一旦自分の家に帰った後、俺は秋人の見舞いに来た。
だけど病室の扉を開けると、中には入らずそのまま走ってまた病院の出入り口まで戻って来てしまった。
秋人に買って来てやったお菓子やジュースが入ったレジ袋は手から滑り落ちて、今頃病室の前に散乱してるかもしれねえ。
でもそんな事はお構いなく、俺は走って戻って来てしまった。
体が勝手に動いてた。
瞳孔が一気に開いた様な感覚がして血の気が引いた。
そして真っ先に頭に浮かんだのは眼鏡の顔だった。
でも眼鏡は今風邪引いて寝てるし、どうしようって思っていた時、左肩にポンっと手が置かれた
「新」
「⁉︎」
懐かしい声が後ろから聞こえて、ゆっくりと振り返った。
「ぁ……」
病室の中を覗いた時、目が合ったのは秋人でも大崎でもなくて……
「か……会長……」
「………久しぶり…だね」
「………」
「……成海は一緒じゃないの?」
「………は……ぃ」
心臓の音がドクドクと早くなる
会長は、さっき俺が秋人のとこに持って行こうとしたレジ袋を手に持ってて、俺の方にそれを差し出して来た。
ブルブルと小刻みに震える手でそれを受け取る。
「……会長……な、なんでここに……」
手の震えを誤魔化そうと、必死に声を発してみるが声も震えてる
「…………大崎に…会いに来たんだ」
「お……大崎?」
「……うん。事件の事を詳しく聞こうと思って…」
そう言った会長を見上げると、また目を見開いてしまった。
「会長………」
「…?」
ちゃんと、しっかりと会長の顔を見る。
会長は……前より痩せた……
体調でも悪いのかなって思ったけど、すぐに俺のせいだって思考が働いた
「……成海と一緒じゃないなら……また日を改めるよ」
「え………?」
「声が聞けてよかった……新が無事で……よかった…」
「…………」
下を向いたまま、弱く微笑んだ会長はそう言って病院を出て行ってしまった。
「あ、……」
引き止めようと声を出そうとしたけど、声は出なくて、床に足が縫い付けられたみたいな感覚がして足もピクリとも動かなかった
「かい……ちょう……」
聞きたいことがいっぱいあるのに
体調だって悪そうだったのに俺の事心配してくれて
あんなに悲しそうに笑った会長を見るのは初めてかもしれない
きっと、会長も俺に言いたい事だってあると思う……
俺だって言いたい事いっぱいある、確かめたい事だって、謝りたい事だっていっぱいある……
「なんで……震えてんだよ…俺…」
でも、体の震えは止まらなかった
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