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プライド
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日野はその後何度も僕に向けて頭を下げてきた。
だがお願いしますと何度言われても、僕が首を縦に振ることは無かった。
何故こんなにイライラするのか分かったよ。
プライドだ。僕のプライドを日野は今全否定している。
学校一の成績を誇るこの僕が、勉強をみてあげると言っているのに。
舞園が可愛いからと、そんな理由で断られている。
………馬鹿馬鹿しい。
そんな浮ついた気持ちで、仮に舞園が勉強を教えてあげるようになったとしても、勉強が頭に入るわけないでしょ。
「悪いけど舞園は忙しいみたいだから。彼女の事は諦めて。」
「ええっ……そんな……」
なにその声……本気で落ち込まないでよね。
勝手に断ってしまったのはいけなかったかもしれないけど、舞園は嫌がってたし。
それに、頭が良くなりたいならとことん僕が指導してあげるよ。
「だから僕が…」
「じゃ仕方ないかぁ〜、ナルにお願いしよっと」
「…………」
言い掛けた時、日野はワザとらしく僕の声に言葉を被せて来た。
腕を頭の上へと伸ばし、あくびをしながら背伸びをしてる。
彼の態度に、さすがに我慢出来なくなって日野のネクタイを掴んでしまった。
「日野、さっきからワザとそんな態度取ってるの?」
自分の方へとネクタイを引っ張り、前屈みになる日野をギロリと睨む。
薄暗い部屋の中で、互いの顔が近付いた時ようやく日野の表情が見えた。
日野は少し驚いた顔をしていて、目をぱちくりさせている。
「勉強なら僕が教えてあげると言っているんだよ?なんで次は成海なの?君の目の前に居る僕に頼めばいいじゃないか。」
「…………」
成海こそ勉強をみてもらうのは無理だよ。
彼はそういう事一番めんどくさがるからね。
「ん〜……」
「決まり。今日の放課後生徒会室に来て。」
「えっ‼︎ちょ、ちょっと待ってや‼︎」
「騒がしいよ。とにかく僕がみてあげるから。」
「いっちゃん、やきそれは…」
「君も、早くオリエンテーションに戻ってよね。サボったら承知しないよ。」
ガラリと扉を開き、悩み込んだ日野に少し強引だけどそう言い残して僕は空き教室を出た。
逸れてしまった水田君を探さなくちゃいけない。
早く体育館に戻らなくちゃいけない。
少し他のチームより遅れてしまった。
一年生を放ったらかしにしてしまった。
僕とした事が、まず日野を叱らなくちゃいけなかったのに。
オリエンテーションサボって何してるのって怒らなくちゃいけなかったのに。
彼が僕を全く見ていない様な目をしていた事が、頭の中に巡って、巡って……
気が付けば、今日の放課後生徒会室に来て。なんて言葉を言ってしまっていた。
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