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無しって事で
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パチ、と目が開くと天井が見えた。
右半身がやたら暖かい。顔を横に向けると桐島の寝顔がそこにあった。
布団の周りを見渡すと脱ぎ散らかした服が散乱しちゅう。
机の上には、昨日の晩飯の生姜焼きが半分以上残った状態で皿の上にある。
寝起きのまだぼやける頭の中で昨日の晩の事を思い出した。
そういえばあのまま、俺は桐島を抱いたがやった。
「………」
朝、またいつもより早く目が覚めてしまった。
最近ずっとこんな感じや。遅刻ギリギリやないのはえい事やけんど。
ここ最近の早起きは決していい目覚めとは言えんかった。
「…おまえ…もう起きたが…?」
「んー?」
寝返り打って俺に背中を向けた桐島を後ろから抱き締めてうなじにチュ、とキスをした。
起きたらフルボッコな。って言よったくせに、桐島は俺より朝が苦手やき全然抵抗もせんし何よりヘロヘロや。
「体大丈夫か?」
「……腰とケツん中痛い…」
「あは……ごめんなぁ…久しぶりやったもんな」
「…死ね……ちっとは手加減せえ」
「ごめんちや」
もう一回桐島のうなじにキスして、体を起こした。
布団から出て風呂場に向かう。その途中で机に置いてあった昨日の晩飯にラップを掛けた。
風呂から上がったら食べようと思って俺の分は電子レンジの中へと入れとく。
風呂から上がり、電子レンジのスイッチを入れて布団の方へ目をやると桐島の背中が見えた。
桐島は背中にも所々傷がある。遠くから見たら目立たんもんやけど、初めて桐島の背中見る人はちと驚くかもしれん。
23歳の体にしてはボロボロ過ぎる。
あとすっごいチビやしな。
「桐島〜、悪いけんど洗濯頼むで〜」
「ん…」
朝ご飯に昨日の生姜焼き食べて、歯を磨いて制服に着替えた。
時間はまだ余裕ある。いっちゃんとの待ち合わせまでまだ余裕ある……。
前ボタン止めながらいっちゃんの事考えた。
最近妙に構ってくれるき俺は嬉しい。
今日だって朝からいっちゃんの顔見れるなんて最高過ぎるやろ。
いっちゃんは美人やし、色白やし、頭良いし、何より俺好みや。
見た目に反して中身にちょっと問題有りなところもまたえいよなぁ〜。
あっ…俺いっちゃんに抱かれたがやん‼︎あんっ‼︎
ふふっ……思い出すとゾクゾクするなぁ…。
「ふんふふん〜」
鼻歌混じりに最後のボタン止めてネクタイを締めた。
「まだ早いけんど行って来るわぁ〜」
布団で寝ゆう桐島の背中めがけてそう言うた。
玄関から出ようとしたら靴紐が解けちょったき、一旦しゃがみ込んで靴紐結びよったら、桐島の声が聞こえた。
「朝っぱらから誰と会うか知らんけんど、昨日俺が言うた事忘れんなよ。」
「………んー、わかっちゅう。」
「大事なもんなんか作んなよ。」
「へいへーい。」
キュ、と強く靴紐を結んだ。手に力が入った。
そして立ち上がってドアをガチャリと開いた時、「行ってらっしゃい。若。」と桐島が呟いた。
少し足が止まってしまう。
「…………」
『若』なんて久しぶりに呼ばれた。
家出る前に蓋された様な感じがした。
たった漢字一文字のその呼び名は、俺が何者であるかを全部表しとる。
若って呼ばれただけで、あんまり学校の奴らと仲良くなるなよ。って言われた気がした。
「行ってきー」
分かっちゅう。と目で言うてから今度こそ家を出た。
けんど家を出てすぐの階段で、頭抱えてしゃがみ込んでしもうた。
「………やばいやん。俺めちゃくちゃカッコつけていっちゃんに『俺なら幸せに出来るで?』とか言うてしもうたやんかぁ……ぅ、くそ……桐島に知られたら殺される……」
まぁでも、いっちゃんは冗談やと思っとるやろうし…それに俺嫌われちゅうしなぁ…
「はぁぁ〜」
なら、別にかまんか。
あの言葉は、無しって事にしても。
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