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ねえ、
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さっきの寝ぼけた日野について、気になるところは多々あるが聞かないでいた。
隣で黙々と勉強と向き合う彼は、最初の頃の印象を大きく塗り替えて行くような真面目さだ。
この調子でいけば、成績が伸びる事は間違いないだろう。
頑張る人は応援してあげたくなる。力を貸してあげたくなる。
教える側にとってそれは素直な気持ちだ。
真剣な顔つきで勉強に取り組む日野を見ていると、微笑ましい気持ちになる。
実に平和だ。
「日野、その一問解いたら朝はもう終わりにしよう。」
「んー、おう。」
まだ点呼まで時間はあるけど、少し早めに切り上げようと思った。
日野が一問解き終わると、その答案用紙を受け取り昼休みまでに採点をする。
「んああ〜疲れた〜」
彼が大きく背伸びをすると、パイプ椅子がギイ、と軋む。
日野が左右順番に首の筋を伸ばしている時だ。彼の首元に赤い痣のようなものが見えた。
「……日野」
「ん〜?」
別に聞かなくてもいい事だろうけど、勝手に口が開いて声を掛けてしまった。
別に、聞かなくてもいい事…だろうけど
「昨日ちゃんと寝た?」
彼の目の下にはぼんやりとだけどクマが出来てる。朝は生徒会室で爆睡してたし。首元には痣……の様なもの。
「ちゃんと日付け変わるまでには寝た?」
夜中まで勉強に励んでいたなら別に何も言わない。けど、その赤い痣、勉強しててそんな痣は出来ないでしょ。
夜遊びして朝爆睡状態だったんなら、注意はする。
「昨日なぁ……そうやな。ちと寝るのは遅かった気がするわぁ〜。」
日野は大あくびをしながら、また背伸びをする。
その度にちらちらと見える痣が気になって仕方ない。
いや痣っていうか、それキスマークでしょ。
「はぁ。夜はちゃんと寝てね。」
「ん!了解や!」
「………」
彼がにかりと歯を見せて笑う。
昨日の夜彼が何をしてたかなんて大体検討が付いた。でも触れないでいた。
別にどうでもいいから。
「いやぁ〜、俺みるみる頭良くなりゆうわぁ〜!」
嬉しそうな彼の隣で参考書と筆記用具を片して、資料は一つになるよう重ね合わせホッチキスで止める。
「いっちゃん〜」
重ね合わせた資料の左端をホッチキスで挟んだ時日野が僕を呼んだ。
そちらを見ると、両腕を組み机に伏せながら僕を見上げる日野と目が合う。
「……なに?」
聞き返すと、日野はにかりと笑った。
「いっちゃんは俺に優しいき。俺好きや。」
「………」
日野がそう言い放ったと同時に、
パチン、という綺麗な音が聞こえた。
「僕は君の事嫌いだけどね。」
「あはっ、言われると思うた。」
「……?」
僕が嫌いだと言えば、ショックだの、なんだの落ち込んでいたのに今日の日野は偉く潔い。
相変わらずニタニタと笑いながらこっちを見てくるけど、しつこく言い纏っては来ない。
気持ち悪いな。最近日野は何か変。
いや元が変過ぎたからこれは普通なのかな?
ちらりと日野をもう一度見てみる。
まだにやにやしてる。
「嫌いって言われてにやにやしないでよ。気持ち悪いから。」
「んへへ〜、えいやん別に〜。嬉しいだけやき。」
「は?」
嬉しい?
「いっちゃんは、俺が好きって言うても、ずっと嫌いって言うてな。」
「……?」
「俺はそれが一番嬉しい。」
「…………」
そう言って日野は、また笑った。
「ねえ、……」
手を止めて、彼へと視線を移した。
にやにやと笑ってた彼はキョトンとした目で僕を見上げ首を傾げた。
背筋がぞわぞわする…。
「君、マゾなの?」
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