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凄い人
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「ああもう‼︎」
苛立ちが募り、つい壁を思いっきり殴ってしまう。
家中探してもどこにもいっちゃんはおらんくて、親父もおらんくて……二人がここにおらんってことは二人は一緒におる言う事や。
「っ……」
あれからもう3日も経つ……
なんであの時、周りの奴らを殴ってでもいっちゃんを止めんかった?
いやまさかこんな事になるなんて思うてなかった。
俺の中では、俺自身がケジメを付けて、俺自身が後腐れなく普通の人間になったらそれでえいと思いよった。
普通になったら、きっとこの気持ちをちゃんと向き合って言える。自信持って言えるって思いよったのに。
………なんで
「いっちゃん…」
なんでここに来た?
「くっ…」
何が「大丈夫だよ。」じゃ。
アホか……ガチガチに震えとったやんけ……
今、いっちゃんの身には何が起きゆうがやろうか…それを考えるだけで頭の血管が切れてしまいそうや。
ただでさえ、こんな場所に来るのは怖かったろうに…
一般人がこういう場所に足を踏み入れた瞬間、二度と元の世界には戻れん。
全部分かった上でいっちゃんは来たがか?
なんで待ちよってくれんかった?
俺、そんなに信用されてなかったがか?
馬鹿でどうしようもない俺を見兼ねて、自分が何とかせないかんとでも思うたがかな?
「……………」
もしそうなら、俺はなんて情けない奴ながやろ。
本当はもっと早くに気付けちょったはずや。
大事にしたい人。って……なんでこうなる前に自分で行動出来んかったのか。
なんでいっちゃんの背中を見ながら俺は後に引いてしまったのか。
行かせるべきやなかった。
何が何でも止めるべきやった。
「…………っくそ‼︎」
ダン、とまた壁を殴ってしまう。
拳だけが赤くなって、焦る気持ちだけが大きくなる。
こんな事しても何にもならん。
俺は何をする為に帰って来たんじゃ。
惚れた男の腕を飛ばす為にここに来たのか…
「んな事させるか‼︎」
アホか‼︎死んでもそんな事させん‼︎
「お前ら‼︎親父はどこにおる⁉︎」
「えっ⁉︎」
ズカズカと家の中を歩き周り、手当たり次第、舎弟に聞いて回った。
けんど、知らんと言われる度に苛立ちは増して、時間だけが無駄に過ぎて行く。
「チッ」
3日や……何もせんまま3日も経ってしもうた…
「どこや……」
これ程不安になった事は今まで一度もない。
いっちゃんは無事ながやろうか。まさか本当に腕を切り落とされてしまったのか……やき3日も俺からいっちゃんを離して、奪った後に俺に会わそうとしゆうがか…親父は…
「くそ親父が…」
間抜けな顔をしよっても、親父は結局こっち側の人間という事や。
誰でもかんでも、ここでの取り引きの仕方が通じると思うなよ…
あんなん、いっちゃんやなかったら今頃逃げ出しとるぞ……
「…………」
ほんま、なんで逃げんかったがよ…なんで俺の為にそこまでするが…
俺はいっちゃんに何もしてやれてない。
身内から守る事すらしてやれてない。
情けない…クズや…ほんまに馬鹿やん俺……
考え始めると止まらんくて、ため息ばかりが口から零れる。
親父に対しての怒り、いっちゃんにこの場所を教えた桐島に対しての怒り、いっちゃんに対しての不安や心配や恐怖。もう色々あり過ぎて頭の中がぐるぐるする。
「しけたツラせんときや。」
「⁉︎」
何度目かはもう分からんかったけんど、ため息をまた一つ吐いた時、目の前から腕を組んだ桐島がこっちを見て、俺と同じようにため息を吐いた。
「桐島……」
お前…今までどこに
「3日経った。」
「は?」
今までどこに行っとった⁉︎と、掴みかかってやろうかと思った瞬間、桐島はボソリとそう呟いた。
「…お前…いっちゃんが今どこにおるか知っとるがか?」
「知っとる。」
「っ‼︎なら教えろ‼︎いっちゃんは今どこや‼︎」
結果、結局掴みかかってしまい、ギロリと睨みを効かせると桐島は廊下を指差して笑った。
「会長さん、ほんま凄い人やな。」
「な…」
桐島が指す方向へ視線を向けると、俺は言葉を失ってしまった。
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