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開会式
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これでもかってくらいの晴天。
夏風がさらりと髪を撫で、頭上を照らす太陽に目をやれば眩しくて目を細め、蒸し暑い気温は夏をその体に思い知らせる。
「来たぜ……」
そして、グラウンドには全校生徒が綺麗に列になり、表彰台と向き合っている。
『ただいまより、第56回……』
放送委員の良く通る声がマイクを通しこの空間に響き渡る。
『体育祭を開催いたします。』
ついに、眼鏡との決着を果たす時が来た。
「…しっ‼︎」
俺は小さくガッツポーズを決めて再度気持ちを引き締める。
…馬鹿眼鏡め。一昨日ちょっと俺がデレてやっただけで油断しやがって。
俺がてめえとの勝負を諦めるワケねえだろ。
……俺は、隙あらばてめえをぶっ倒す。
「はん…今のうちに油断こいてろアホが……」
一昨日、俺は体調を崩しちまって、おまけに次の日筋肉痛で丸一日動けなかった。
だがしかし、メンテナンスはばっちりだ。
そしてあいつは俺がまだ全回復してねえと思ってる。
今日の朝なんかイケボで『無理すんなよ。』とか言いながら頭ポンポンして来たぜ。
……間抜けめが……その優しさが仇となる。
俺はあいつが見てねえ所で本気出してあいつに俺の凄さを見せつけてやる。
100m走はもちろん一位狙いだ。
ちなみに俺が出る種目は5つ。
・100m走
・『一番がいいの。』(色別対抗リレー)
・『そんなに入れちゃうの?』(玉入れ)
・『可愛くてごめんなさい。』(着せ替えリレー)
・『関ヶ原の戦い』(騎馬戦)
だ‼︎
「……………」
いや………うん。色々とツッコミたい部分はあるだろう。俺もある。
見ての通り100m走以外の種目名がおかし過ぎる。
誰だよこんな種目名にした奴。
実行委員の奴等完全にふざけてやがる。
……しかも、俺は半強制的にやらされた種目がある。
『そんなに入れちゃうの?』と『可愛くてごめんなさい。』つまり玉入れと着せ替えリレーだ。
玉入れの説明は要らないだろう。
問題は着せ替えリレーだ。
これはリレー種目が多いこの学校の伝統種目の1つと言っていい。
ルールは至って簡単だ。
1チーム7人。スタートから一気に突っ走り、白線が引かれている場所まで行き、そこに無造作に散りばめられている二つ折りになった紙を拾う。
拾って次の白線が引かれている所まで走る。
そこには即席着替え室と大きな衣装ケースが設置されていて、その場まで来ると紙を開き、中に書かれているモノの衣装を衣装ケースから取り出し即席着替え室で素早く着替えを済まし、そしてその格好のままスタート地点までグラウンドを一周。
で、次の人にバトンを渡す。
………長ったらしい説明だが、簡単に言えばコスプレリレーなのだ。
「……ありえねえ…」
今日、唯一の難関と言えばそれだ。
玉入れはまだいい。ショボいけどまだ許せる。
だが、なんで俺がコスプレなんかしなくちゃいけないんだ。
元わと言えば、クラスの女子が『どうせ男のコスプレ見るなら渋谷君のがいい〜』とかふざけた事言いやがったせいだ。
これじゃ……文化祭の二の舞だ。
「はぁ……」
眼鏡にこの事を言える訳もなく、俺は女装となるコスプレだけは避けたい。と、その事ばかり願っている。
「……そういや、眼鏡もなんか変なリレーに出るって言ってたよな…?」
何だったっけ?着替えリレー以外に変なリレーってあったか?
『皆さん、おはようございます。』
「………」
ぼけーっと考え込んでいたら、表彰台に会長が上がり挨拶を始めた。
『天気にも恵まれ、この日全校生徒の皆さんと、こうして共に体育祭を行う事が出来て本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。』
会長が爽やかな笑顔を向けると、所々から女子の黄色い声援が聞こえて来る。
「……会長…」
あれ?会長、長袖のジャージ着てる…暑くねえのかな?
「月島会長、今日も素敵っ」
「きゃっ、目が合ったかもっ」
「私今年こそ会長に告白する‼︎」
「………………」
周りからそんな会話が聞こえて来る。
もう一度会長の方へと顔を向けると、会長はこの燦々とした太陽よりも確かにキラキラ輝いてる。
そりゃ、会長はモテる。
こういうイベント行事がある日、その日の変なノリとテンションで好きな人に告白する人は多い。
いや…真剣に告白する人も居るだろうけど……なんかイベント行事の日って告白とか多いんだよな。
「………眼鏡…」
あいつも、きっと今日は沢山女子から告白されんだろうなぁ。
「どうしよう…っ、やっぱり会長かっこいい…」
「彼女居ないらしいよ?会長と話す機会なんて滅多に無いんだから、こういう時こそ行動あるのみ‼︎」
「ちょっと、抜け駆けは許さないから‼︎」
「…………」
……にしても、会長の人気は底知れない。
まぁ、会長はかっこいいし優しいから当然か……
なんて思い肩の力を抜いた時だった。
「いっちゃーーーーーん‼︎今日も可愛いなあ‼︎いつもの100倍、いや1000倍可愛いでええええ‼︎」
「⁉︎」
全校生徒が密集する中、聞き覚えのある声がグラウンドに響き渡った。
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