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赤い跡
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目を覚ますと、オレンジ色の髪が鼻先を撫でた。
僕を抱え込んだまま気持ち良さそうに眠る日野。
少し照れ臭くなったけれど、事が済んだ後の寝顔を見るのは初めてで、目にかかる前髪を撫でてやると、日野はふにゃりと笑った。
「…………犬っ毛」
決して柔らかくはない日野の髪を親指で何度も撫でる。
目を覚ました時、こうして顔が見れる事がこんなにも幸せだと感じるとは思わなかった。
時間を確認する為に、寝返りを打つと大きな手に引き寄せられる。
「ちょ、日野」
「んん〜」
寝ぼけているのか、しっかりと僕を捕まえて首元に顔を埋めてくる。
日野の髪が擦れて、なんだかくすぐったい。
「日野……寝ぼけてるの?」
「ん〜〜」
「ねえ、くすぐったいってば」
うなじにキスをされ、舌で肌をなぞられ、強く吸われる。
「……いっちゃん…すき」
唇が離れた瞬間、チュ、という綺麗な音を立てた後呟く。
ここまでして起きてないなんて、本当に日野は僕に恥ばかりかかせる。
今、僕が君に応えても、君は何も聞こえてないくせに。
「僕もだよ」
日野は、決して僕に跡を付けない。
行為の最中でも、絶対に僕の体に跡を残さない。
「…………」
襟元に触れ、唇を強く押し付ける。
肌を吸い上げ、口を離すと、日野のうなじに赤い跡が残る。
くすぐったかったのか、寝返りを打った日野は数回襟元を掻いた後、またスヤスヤと気持ち良さそうに眠ってしまった。
ベッドから降り、服を着て、時計を確認する。
約束の時間まで、30分を切ってしまった。
ネクタイを締め終え、最後に日野の背中にキスをして家を出た。
アパートの階段を下りる足取りは重く、今すぐにでも引き返したいと思える程だった。
日野との約束は守れなかった。
なのに、僕は水田くんとの約束を守ろうとしている。
それが正解なのか、間違いなのかは僕には分からない。
日野に伝えるのが怖い。僕は日野がどこまで出来てしまう人なのか知らない。
だけどこれだけは言えると思う。
僕のせいで、日野の人生をめちゃくちゃにはしたくない。
大丈夫。少しの間耐えればいいだけの話だ。
ずっとこのまま……という訳ではない。
自分に言い聞かせながら移動していると、あっという間に辿り着いてしまった。
「…………」
ゆっくりとインターホンを押す。
するとすぐに返事が返ってきて、家の中から足音が聞こえ勢いよく扉が開いた。
「月島先輩っ」
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