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日が沈む早さに寂しさが増す
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お互い動けなくなるまでシたあの日は、今じゃ会話の中でネタになりつつある。
馬鹿みたいに何度も体重ねて、セックスという行為に全部を委ねて、愛してると言い合いながら、笑ったのを思い出す。
あれから……なんとなく……なんとなくだけど、あいつの事普段から名前で呼んでやろうかな、なんて、思い始めた。
まだ慣れないし恥ずかしいけど、いつまでも眼鏡呼ばわりは可哀想だし……。
「渋谷君、そろそろ行かないと……」
思えば、あれからもう随分と日が経った。
あいつといるのが当たり前になってから、俺の学校生活、いや人生が180度変わった。
「おう」
俺の周りの奴らも色んな変化があったと思う。
大崎と秋人は相変わらずラブラブのようで、秋人の愛妻弁当を毎日幸せそうに俺に自慢してくるようにまでなった。
秋人は消防士になる為に今は勉強に励んでいるらしい。
喧嘩も、氷崎との一件から辞めたらしく、真面目に学校にも通って授業を受けてるようだ。
あいつが真面目に勉強なんて、想像つかねえけど、消防士ってのは何だかしっくりくる。
大崎は医者を目指すと言って、最近難しそうな本ばかり読むようになった。
会長のお袋さんが医者らしく、時々会長のとこに行って話を聞いたりしてる。
人助けが出来る仕事を目指す二人は、本当にお似合いだと思う。
会長はと言うと……
「会長‼︎遅いですよ‼︎」
「ご、ごめんなさいっ」
そうだ。今の会長は大崎だった。
「もうっ‼︎すぐに謝らない‼︎交代式から2ヶ月経つのに、いい加減堂々として下さいよ‼︎」
会議室の前で俺たちを待ち構えていた人物。
ビシリと指をさしながらそう指摘するのは、かつて大崎が生徒会役員の選考をする際に担当していた一年の天海春香(あまみ はるか)。
新しい生徒会書記だ。
部長さん並みに声の張りが良く、威勢がいい女子生徒。
「ま、まぁ……ちょっと頼りないくらいの会長の方が?可愛いですけど?」
急にデレっとし始める天海は、どうやら大崎に心底惚れているらしい。
そしていくら鈍い俺でも分かるこのツンデレ様。
ちなみにダメ男にときめくと本人が言っていたが、ちょっとそれは大崎に失礼過ぎやしないか?
まぁ、大崎の事が好きでも、こいつには秋人という名のオカンがいるからな。あ、彼氏か。
せいぜいあいつより上手い飯を作るか、喧嘩が強くなけりゃ大崎は落とせねえぞ。
「会長、会議の準備出来ました」
「あわわっ、ありがとうっ!ごめんねっ今回も資料作り任せちゃって……」
「別に大丈夫ですよ。ボクの仕事ですから」
会議室から顔を出したのは、新しい会計の水田龍之介。
「ほら、お二人とも早く中にっ」
天海に背中を押され強引に中に入らされる。
その時、水田と目が合ったが、奴はニコリと笑って軽く会釈をして自分の席に戻って行った。
最初はムカつく奴とか思ってたけど、的確な仕事振りにいつも助けられている。
おまけに、あいつは掃除が得意らしく、誰よりも朝早くに生徒会室に来て毎日作業前に掃除をしている。
おかげで生徒会室はピカピカだ。
「えっと……それじゃ今月の……えっと」
「“経費報告会”」
「け、経費報告会をしたいと思いまふっ」
天海のフォローを台無しにする大崎。
思わず笑ってしまうと、周りの役員達もクスクスと笑い始めた。
「す、すみません」
「いいじゃねえかよ。なんか空気和んだわ」
「……し、渋谷君……」
会長とは全然違う大崎。
あ……今は月島先輩って呼んだ方がいいのかな?
「ではまず……飼育委員の方から…」
でも、会長は俺にとってずっと会長だ。
もちろん、大崎の事はちゃんと認めてる。元々、次の会長になるべきなのは大崎だと本人に言ったのは俺だ。
俺はすぐ感情的になって突っ走ってしまうし、キレやすいし、周りの事が良く見える大崎の方が抜擢だ。
それに、俺はどちらかというと、頼りなくても人の為に頑張ってる大崎を支えてやりてえと思ったんだ。
だから俺は……
「副会長、聞いてます?」
「ふぇっ」
「もう、飼育委員が経費を上げてほしいって。副会長の意見も聞かせてください」
「あ、…えっと、うん。良いんじゃね?」
「適当過ぎます副会長‼︎」
天海の声が鼓膜に響く。
思わず目を瞑ってしまった。
会議中に他の事考えるなんて。みっともない事をしてしまった。
「副会長、これメモしておきました」
「み、水田ぁ〜」
会議内容をしっかりとメモしていた水田が神に見える。
ありがとうっ。と拝んだ後、メモに目を通し会議を進めた。
「では、職員会議で取り上げてもらえるよう、僕の方から申請しておきます」
話が進む中、やっぱり別の事を考えてしまう。
「渋谷君?」
外を見ると、もう夕方だ。
赤くなっていく空は、見ていて寂しくなる。
交代式が終わると、その日から毎日が過ぎるのが早く感じた。
今日だって…………もう日が沈む。
「時間が経つのって……早えのな」
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