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昔の秋人
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ここに務める以前から多少は秋人のことは聞いていた。だけど英二さんの話はそれ以上に残酷で、酷いものだった。
これは俺が秋人と別れた後の出来事で、今さら後悔したって遅いのはわかってる。
……けど、怒りで頭がどうにかなりそうだ。
「……秋人は誰のことも覚えていなかったんですか」
「恐らくな。その件に関わった人間のことは綺麗に忘れてるみたいだった」
「そう……ですか」
「だけど時々さ、誰かを探すように外を見てたなぁ……」
英二さんは少し寂しそうに呟く。
そうだ。秋人は昔から寂しがり屋で、我儘で、だけどすごく優しい太陽のような子だった。
どうして今まで忘れていたのだろう。
もしかしたらずっと呼んでいたのかもしれない。
心の中で、ずっと、ずっと、ずっと……
『あきら、あきら……俺が呼んだら這ってでも来ること!いいな!!』
幼いあなたと昔交わした約束。悪戯な笑顔で言っていたことを思い出す。
「英二さん、本当にありがとうございました」
英二さんは驚いて首を傾げた。俺から責められると思っていたらしい。
「事情はどうあれ、あの頃の秋人にとっては心の支えだった筈だから……
秋人に優しく接してくれる人間が一人でもいてくれてよかった」
「……おまえ」
俺は一刻も早く秋人のもとへ戻りたくなった。
秋人はどんな思いで今まで生きてきたのか……そんなの決まってる。
もう顔も思い出せない母、家族以上に親しかった少年。その2人にいつか会えると信じて生きてきたんだ。毎日窓の外から探すほどに焦がれていたに違いない
そんな健気な願いを卑しい大人たちがボロボロにしていったんだ。
俺は英二さんに再度頭を下げ、秋人の部屋へと急いだ。
なぜだろう……さっきから嫌な胸騒ぎがする…
階段を上りきり視界が開けると、その予感は的中していた。
片足を窓枠に乗せ、秋人が今にも窓から飛びおりようとしていたのだ!!
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