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冷たい風
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秋人はこちらに気づくと、ぼんやり見つめては悲しそうに顔を歪めた。
「秋人ッ!?危ないから離れて…っ!!」
「………」
俺は秋人が驚かないように少しずつ近づいていった。全開に開ききった窓からは冬の冷たい風が吹き、背筋が凍える。
秋人はまた前を向き、何の躊躇いもなくグッと外へ身を乗り出した。そしてもう少し重心を前へ傾けると落ちてしまう所でピタッとその動きを止めた。
落ちてしまうギリギリで俺が抱きとめたのだ。
「ッ、はあっ……は、あ…!!あき…」
心臓が、止まるかとおもった。
掴んでる今も緊張で震えてしまう。
……こんなに恐ろしいことは、ない
未ださっきの出来事が頭から離れず放心するなか、頭上から低く怒りがこもった声が部屋に響いた。
「……おまえ誰だ?」
訝しげに見つめてくる秋人は本当に分からないようだった。俺はあまりの衝撃で声が出せなかった。
まさかまた忘れてしまったのか!?
『あの出来事に少しでも関わった人間のことは忘れるみたいだ』
もしこれが本当なら。秋人が俺のことを思い出しかけてるとしたら……
秋人はもう一度、全てを忘れようとしているのかもしれない。
いや、もう忘れてしまっているのか。
俺は、警戒する秋人を窓から下ろし跪いた。
そして再度自分の名を口にする。
「執事の杉田晶と申します。初め…まして、秋人様」
また冷たい風が吹きこみ、体の体温を下げていった。
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