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悲しい涙
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自己紹介をするが、秋人は不機嫌そうに眉を寄せていた。
なんだか子供の頃の秋人と接しているみたいだ。
「……杉田晶。そんな男は知らないっ……顔も見たくない!!」
ドカッと強く肩を蹴られよろめき尻餅をついた。秋人はぎゅっと拳を握り、怒りのまま震えていた。
「どっか行け……、、お前なんか大嫌いだ!!」
感情のままに声を荒げ、水分が足りてない唇からは血が滲み出た。
「……では、どうしてその様なお顔をされているのです」
秋人の瞳からはポタポタと大きな雫がこぼれ落ちていた。本人は涙を拭わず俺の側へ寄ってはポカポカと叩いてきた。
「うるさい……!!お前なんか大嫌いだ」
「私は秋人様のこと大好きですよ」
そう微笑むと、叩く腕が止まり動揺していたが、すぐにまた顔を曇らせた。
「……じゃあ何でおれを置いていったんだ」
「え……」
「お前だけはおれを裏切らないって!おれが呼んだらすぐに来るって、あの日約束した!!
……ずっとお前が来るのを待ってた」
秋人は力無く俺を掴み、そのまま脚の間に崩れ落ちた。
「どうして死なせてくれない……お母様だって一言言ってくれたら喜んで死ぬのに。どうして…どうしてッ!!」
この子は……
体は成長しても、心はあの日のままなのだ。自分の置かれてる状況を理解できずに困惑している子供で、周りから生を望まれていないと感じとってしまっている。
そしてその不安定な精神状態から抜け出したくて楽なほうへと引っ張られるのだろう。
俺はぐすぐすと泣きつづける秋人をそっと抱きしめ宥めた。
だが、どんなに背中をさすっても、頭を撫でても、言葉をかけても泣き止むことはなかった。
そして気づけば、秋人の乾いた唇に自分の唇を重ねていた。
ーーー少し鉄の味がした
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