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回想 晶3
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「あははっ やな!早くこっち来て!!」
「ひいいっ!!坊ちゃん待って…待ってくださ、ひぃ……はぁはぁッ」
お気に入りの庭でもう1人の執事「矢鳴」と秋人はまた追いかけっこをしていた。体力がない矢鳴をからかうのが楽しいらしい。
それを少し離れた場所で晶は眺めていた。
くるくると表情を変える秋人から晶は目が離せなかった。
美しく舞う髪に、活発な笑顔。この子はどういう子なのか興味が湧いた。
そんな晶のもとへ秋人はかけ寄り、一緒に遊ぼうと手を引いた。晶は戸惑いながらもその幼い手を握り、日が暮れるまで秋人と2人で遊んだ。矢鳴は早々にリタイアしたようだ。
秋人は隠れ家があると言い、庭から離れ、もう使われていない錆びれた扉の前に晶を案内した。
鍵はかかっておらず、秋人は勝手に入っていった。そこは花園のように美しく、色鮮やかな小さな花が広がっていた。周りには蝶も飛んでいて隠れ家というにはあまりに素敵に手入れされた場所だった。
「秋人様……ここって」
「あきとって呼べ!!様はいらない。俺はその呼び方好きじゃない…」
「ですが……」
秋人は晶の側までかけ寄り、ぎゅっと両手を握り言った。
「あきら!俺のお願いはなんでも聞いてほしい。執事なんかいらない……俺は何でも話せる家族がほしいんだ!!」
この子は……なんて真っ直ぐな目をして言うんだ。我儘で自分勝手なお願いだ。
「あきらの心がほしい……俺にちょうだい」
キラキラと輝いて見える。宝石のように綺麗な瞳はしっかり晶を捉えて離さなかった。
俺だけの『天使』だ
晶は初めてそう強く思った。触れることも出来ず、そのまま膝をつく。
「俺なんかの心でよかったら、喜んで…」
晶は無意識に笑っていた。生まれてから久しくその感覚を忘れていて、どうしても笑顔になれなかったのだ。
それを見た秋人はどんなに嬉しかっただろう。
きっとすごく素敵な笑顔を晶に贈ったに違いない。
そして二ヶ月後に秋人の父が事故で他界した。
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