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甘やかしは…
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20分前……
転校2日目の昼休み
俺は膝の上でうとうとしてる秋人を抱き上げ教室を出ようとしたら、慌てた様子で担任の太田先生に呼び止められた。
「あ、杉田くんちょっと待って!!すこし話したいんだけどいいかな?」
「……」
できるだけ秋人を1人にしておきたくない…
かといって行かないわけには……
「……秋人ごめん、少しの間ここで待っててもらえますか?すぐ戻りますので」
「うん、わか…た」
コクンと頷く秋人を残し、急いで生徒相談室へと入る。
中に入ると、理事長と太田先生が待っていた。
「お待たせ致しました、理事長」
「かまわないよ。ほら、座ってくれ」
「失礼します」
椅子に座り、用件を尋ねると、やはり秋人のことだった。
俺と秋人は特例(内密)でこの高校へと通わせてもらっている。代わりに結構な額をここに寄付をしている。
そして随一報告をして変わりはないか報告を徹底する決まりだ。
「ええ、今のところ変わりはないです。…心配なことはいくつかありますが」
「ん?例えばどんなことだい?」
俺がそう呟くと、不思議そうな顔でそう聞いてきた。
「そうですねぇ……例えばテストです」
「テスト?問題が解けないということかね?」
「いえ、まだ手の筋肉が弱くて鉛筆が持てないのでどうしようかと…」
「………」
「…………」
一気に理事長と担任の動きが固まった。
「あとは…授業中に黒板に書かれる漢字が読めないことです。もう少しひらがなを増やしてほしいです」
こんな感じで話していると、太田先生が慌てた様子で遮った。
「ま、まってまって杉田君!!」
「はははは、面白いな黒田君は!漢字の件はどうにもならんが、テストは別室で受けるかたちでどうだい?鉛筆が無理なら答えを口にして誰かに書いてもらえばいい」
しわだらけの顔をくしゃっと崩して笑う。
相変わらず気さくな人だ。
「はい、ではその様にお願い致します。では…失礼します」
「杉田くん」
腰をあげて扉に手をかけると、理事長にそう呼び止められた。
「…なんでしょう」
「あまり彼を甘やかすのはいけないよ」
その不敵な笑みに少しだけ寒気がした。
秋人を甘やかすなって?そんなの…
「……」
俺は何も言わず、うすく笑ってその場を後にした。
そして今に至るわけだが……
俺は秋人が傷つかなければ他はどうでもよくて、ずっと笑顔でいてほしくて…
それだけなのに
……それが一番難しい
目の前でメロンパンを食べてる秋人に笑顔を向けながらそう思った。
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