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夜の静けさ
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家に帰り夕食をすませた秋人は、俺の手を頼りによたよたと眠そうに歩いていた。
大きな扉をあけて中へと入り、ベッドへと寝かせる。
……いつもはここで部屋を出ていくところだが、今日はすこし違うようだ。
秋人がずっと俺の手を握ったまま離そうとしない。
「……秋人様?眠れないのですか?」
小さな白い手がキュッと俺の手を握る。
可愛いが、そろそろ離してくれないと報告会に遅れてしまう。
しばらく待っていると、ぱくぱくと口を動かして一生懸命声を出そうとしていた。
「きょ…ぅ……あ、あ…たのし、かった」
今日のお昼のことだろうか。
のどを詰まらせながら途切れ途切れに話してくれる秋人に耳を傾ける。
静かな夜の空気が頬を撫でた。
「たくさん…おはな、し…できた」
「それは…良かったですね」
秋人の頭を撫でて微笑むと、どうしてか秋人は不安そうな顔をした。
「……?」
「…ずっと……そばに、いて…」
「ええ…お望みとあらば…いつまでも」
「……うん…」
優しく頬を撫で、柔らかい布団を肩まで掛けてあげる。
10分程で秋人から小さな寝息が聞こえてきた。俺は起こさないように手を離し、カーテンを閉めてまわった。
「…おやすみなさいませ、秋人様」
そう掠れる声で囁き、額にキスをする。
音を立てないように部屋を後にして、急いで2人が待っている執事室へと急いだ。
「………」
夜の静かな空間が広がる。
少しだけ空いている窓から吹く風に揺れて、時折月が様子を伺ってくるのにはもう慣れた。
「……うそ…つき」
「ぼくを…ひとりにし、ない…で…あきら」
目が熱くなるのを感じた。
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