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「…おにい、ちゃん。おに…、…っ、お、にい、ちゃ…」
泣きながら、その小さな手を抱きしめる俺の背中に回す。すっぽりと俺の腕の中に収まってしまうかいじに、ああ、こんなにもこいつは小さかったんだなあと思った。
何度も何度も『お兄ちゃん』と呼ぶかいじに、うんうんってずっと返事を返してやる。
俺が構わなくなってから、毎日リビングで1人、ぼそぼそとお菓子を食べていたかいじを思い出す。毎日かいじが食べていたあのお菓子。あれは、俺が初めて自分の小遣いで買ってやったお菓子だった。かいじは、俺が邪険に扱ってもずっと俺を大事に思っていてくれたんだろう。泣かない代わりに、怒らない代わりに。いつか、またお兄ちゃんと呼べますようにとあのお菓子を食べて俺を思っていたんだろう。
後悔と懺悔で胸が痛い。だけど、そんなの自業自得。
「ごめんな、かいじ」
ようやく素直になれた俺は、何度もかいじに謝った。
「おい、なつき。今日もまさとと弟迎えに行くのか?」
「おう!悪いな、なんたってかいじが待ってるからな!」
「おせーぞなつき!早くしろよ、小学校下校時刻んなっちまうだろうが!」
「今行く!」
声をかけてくるクラスメートに断りを入れて、早くしろとせっつくまさとに駆け寄り鞄をひっつかんでまさとと一緒に小学校へ向かう。
「昨日夜にホラー映画やってたじゃん?あれ見たらさあ、たけるが枕抱きしめながら俺のベッドに潜り込んできたんだよ。超かわいくね?」
「ばっかやろ、かいじなんか途中で俺がお茶取りに行く度にこっそり付いて来てたんだぜ。『こわいから行かないで』って遠慮して言えねえの、超いじらしくね?」
ぎゃあぎゃあと、お互いの弟ののろけ話をしながら小学校に向かう。
あの日から俺は180度変わった。家でも暇さえあればかいじにひっつき、かまい倒し、遊んでやる。次の日には買えなかった服ももう一回買いに出かけた。あれこれ試着させてコーディネートする俺に店員さんが『仲がおよろしいんですね』と言うのに笑顔ではいと返事をする。
俺が何かをする度に嬉しそうにはにかむかいじがかわいくて仕方がない。
先輩たちとも、喧嘩した。『俺の大事な弟なんで悪く言わないで下さい』って言うと今まで散々ばかにしてたろってキレられたけど、ちゃんと理由を言うと納得してくれたのかもう何も言わなくなった。
かいじは、俺が構うようになってから段々明るくなってきた。そんで、お菓子も食べるのをやめた。休みの日にも俺が連れ出すようになってから、少しづつ痩せはじめている。なんとなくだけど、かいじは痩せたら美少年なんじゃないかとうっすらわかる。
それはそれで問題だなと俺はやっぱり太らせるべきかなと悩んでいるところだ。
まさとと校門で待っていると、かいじが校舎から出てくるのが見えた。三人くらいのガキに囲まれてちょっと俯いて歩いてきている。あいつら、まだかいじにちょっかいかけてやがんのか。最近見なかったからすっかり忘れてた。
「かいじ」
「お兄ちゃん!」
俺が呼ぶと嬉しそうに駆けてくるかいじをぎゅっと抱きしめてやる。抱きつき返してくるかいじ超かわいい。
ついでにそのままギロリとかいじにちょっかいをかけていたガキどもを睨んでやる。
こいつら、確かかいじに触りまくるって言ってたよな。
「お前ら、俺のかいじに手ぇ出してんじゃねえぞ。」
小声で脅しをかけてやると青い顔をしてこくこくと頷いた。大人げないって?かまわねえよ。
となりでにやにや笑うまさとにワンパンチ入れて、かいじと手をつないで帰る。
「今日は学校どうだった?」
「えっとねえ…」
たわいのない話をしながら二人で帰る。嬉しそうに俺に今日学校であったことを話すかいじを見て俺は大事な弟をきちんと取り戻すことができたことに幸せを感じる。
あとで、小遣いを持って一緒にスーパーに行こう。そして言ってやるんだ。
『好きなお菓子を取れ。兄ちゃんがなんでも買ってやるから。』
きっとかいじは、嬉しそうにあのポテトチップを取るんだろう。
つないだ手を二度と離さないようにと、強く強く握りしめた。
end
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