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1.立っち(日常 伊織、海、誠一郎、ポチ)
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「じゃあ、行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。」
チュ
いつものように、軽い口付けを交わして流衣を送り出す。
少しばかり疲れたような表情の流衣。
昨日のことは、忘れて欲しいんだけど。
無事に帰ってきてくださいね。
パタンと閉まるドアに、声には出さずにそう祈る。
さて。
遠くに聞こえる、誠一郎君の泣き声。
おやおや、どうしたのかな。
ふぅ、と一呼吸を置いてリビングへと戻る。
ガチャ
「びぇえええええええええええ!!」
リビングのラグの上に人をダメにするクッションを置いて、その上に寝かせていた誠一郎。
スヤスヤと眠っていたのに起きてしまったようだ。
この泣き方はおむつだな。
「誠一郎ー。おまたせ。」
「うええええー!えっ!ん"ん"ー!」
「はいはい。気持ち悪いねー。すぐ替えるからね。」
誠一郎用に用意した小さなチェストから、替えのおむつとベビーパウダー、お尻拭きを持ち出す。
タオルを敷いて、その上に誠一郎を寝かし直しておむつに手をかける。
はい、健康的。
色匂い共に問題は無さそうです。
よく食べるもんね、君。
体もここに来た時より大きくなったんじゃないかな。
太ったというわけではなくてね。
赤ちゃんって結構早く育つのね。
「誠一郎は綺麗好きで助かるねー。すぐ教えてくれるもんねー。」
「うっ…うっ…」
「ほら、誠ちゃん。もう綺麗だよー。汗疹も治ったね。綺麗なお尻。」
「……あっ!あぁー!」
「ふふ、笑って誠ちゃーん!誠一郎の笑顔は世界一だよー。」
「んん!んふ!きゃふふ!」
「誠ちゃん、可愛い!」
「…………1人で何してんの、海君。」
「あら、伊織。おはよう。」
おや、気がつかなかった。
リビングに伊織が入ってきていた。
リビングのドアのところで立ち止まり、気まずそうな表情でこちらを見ている。
やめてよ、余計に恥ずかしいじゃない。
「誠一郎のおむつ替えてたんだよ。誠一郎笑うと可愛いから。」
「…おん。」
「何か飲む?」
「……アイスティー、砂糖多めで。」
「はーい。ちょっと誠一郎見といてくれる?最近はいはいしまくってて危ないの。」
「おん。」
いいね、アイスティー。
自分の分も用意しよう。
今日はウェッジウッドにしようかな。
誠一郎の後始末を終えて、ラグから立ち上がる。
伊織は何か気まずそうにドアの前でソワソワしている。
何してるの?
「…なに?なにしてるの?」
「いや…あの…」
「あ、体大丈夫?薬の後遺症ない?」
「あ、それは全然。筋肉痛するくらいかな。」
「じゃあ大丈夫そうだね。座りなよ。」
「うん。海君、あの、ほんまにごめんな?」
「ふふ。もう忘れな?あ、あの男の写真は流衣に渡してるから、対応は流衣がやると思うよ。」
「うん。反省してる。」
「伊織は悪くないよ。お仕事頑張ってね。」
「ありがと。」
伊織はゆっくりと誠一郎のところへ向かって、ソファへと座った。
まだ気にしてるよね、伊織。
いいんだよ、忘れて。
伊織が綺麗であるなら、それでいいんだ。
さて。
ウェッジウッドの茶葉を濃く煮出す。
いい香り。
お湯は88度。
この温度が一番香りが立つ。
グラスに氷を入れて、濃く煮出したお茶を注ぐと少しずつ溶けていく氷。
透明感のある、香りの良いアイスティーの出来上がり。
ガムシロップの代わりにピュアメープルシロップを少し垂らして。
「海くーーーーーーん!!!みてみてみてみて!」
びっくりした。
伊織、なんなのよ。
「なによ、もうすぐアイスティーできるよ。」
「立ってる!!誠一郎立ってる!!」
「え?」
アイスティーを2つ手に持ってキッチンからリビングに戻ると、リビングのソファの端を掴んでプルプルと揺れる脚で立つ誠一郎の姿が。
「おぉ…まじか。」
「なんやこいつ。もう立つんか。」
「掴まり立ちだけどね。早いね。たしかに。」
「飯の食い過ぎで肥えたんちゃう?脚ふとなってない?」
「失敬な。栄養管理はちゃんとしてるよ。誠一郎動きたがりだから足の筋肉発達したのかな。」
そんなことを話してるうちにポテリと転ぶ誠一郎。
しばらくぼーっと座り、すぐにはいはいをしながら動き出す。
「なんや、もう終わりか。」
「疲れたんじゃない?実際歩き出したら大変よ?」
「確かにー。」
伊織はケラケラと笑いながら誠一郎の脇に手を入れてヒョイと持ち上げる。
「お前もはよ大きくなれよー。一緒に遊ぼうなー。」
「変な遊びは教えなくていいからね。」
「おーこわ。お前の母ちゃん厳しいなぁ。」
「誰が母ちゃんだ。」
ソファの横にあるサイドテーブルにアイスティーを置く。
ガチャ
「…………。」
「おや、ポチ。おはよう。早いね。」
ポチは半分開いた目をパチパチさせて、のろりのろりとソファへと歩いてきた。
廊下暑かったのかな。
この部屋涼しいもんね。
「なんやポチ。また涼みにきたんか。」
「………。」
「なんや、なに睨んでんねん。」
「……。」
「……多分、昨日のことかな。ポチも心配してたんだと思うよ。」
「……まじ?お前……そんな義理堅いやつやった?ほんまに?」
「………。」
ポチはふいっと伊織から視線を外してソファに座る。
そのままポテっと横になった。
「その……ポチもごめんな。ありがとさんやで。」
「……。」
「…大丈夫。ポチは分かってるよ。」
多分ね。
多分だけど。
「伊織、今夜なに食べたい?」
「んー、すき焼き。」
「この暑いのに?」
「なんやこってりしたもん食べたくない?俺昨日の飯全部吐いてんもん。」
「なんならおかゆとかじゃない?それなら。」
「そんな味気ないもんよりすき焼きやろ。」
「君が食べられるんならいいけど。」
鍋物って楽なのよね、私は。
基本ぶっこむだけだから。
それなら今夜はすき焼きですかね。
手に持つアイスティーをグイッと半分飲み込んだ。
、
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