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あいつからその話を聞かされると、自分の顔を右手で押さえてため息が漏れた。
正直驚いた。俺に散々酷いことした癖に、あれは臆病者がする域を越えていた。
むしろ“怖さ”を知らない者がすることだ。
大胆で恐れを知らない――。
なのにあいつは、俺にしたことが怖くなって逃げ出したらしい。
理由は嫌われるのが怖かったそうだ。
……俺は聞いて呆れた。
そしてあいつのことを変なヤツと思ったのと同時に、意外に気が小さい所もあるのだと知った。そう思うと自分の中で、スッと怒りが治まってきた。
そこで拍子抜けすると、俺はあいつの目の前で力が抜けたように只笑ったのだった。
「おかしいですよね。あんな大胆なことしたのに、貴方に嫌われるのが怖かったから逃げ出すなんて……あんなのは卑怯者がすることですよね?自分でも 解ってます。でもあの時はそうでもしないと自分がダメでした……」
阿川はそう話すと、後ろを振り向いて俺の瞳をジッと見つめてきた。その強い眼差しに俺は、あいつの瞳を見つめ返した。
「……お前がとんだ臆病者だったとはな。あんなことした癖にホント聞いて呆れた。俺は少なくてもあの時、お前が隣にいたら許すことも出来た――」
「えっ……?」
葛城は阿川にそう言い返すと、見つめた瞳を僅かに反らしたのだった。
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