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僕の幸福理論
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12月12日
来た。やっとこの日が。
やっと学校に行ける。
何回も乗って大分乗り慣れた電動車椅子を動かし、病院を出る。
病院の前には、母さんが車を用意して待っていてくれていた。
体力の関係と、病院から学校までの距離的に徒歩(車椅子に乗りながら)の通学は無理になった。
だから、これからは母さんが送り迎えをしてくれる。
「おはよう、アズマ。」
「おはよ、母さん。」
笑ってくれるけど、きっとすごく辛いんだろうな。
ごめんね。ありがとう。
全部分かってるから、僕は笑うことしかできない。
学校に向かいながら、たわいもない話しをする。僕の体のことには、触れないまま。
ふと会話が途切れて、なんとなく僕は窓に目を向けた。
そういえば、僕がいつも通ってた通学路にはもう二度と行かないんだよな。
ヒトミの家にも、きっともう行く機会はない。
でも、それでいいんだ。
学校に着いて、僕は車のドアを開けた。
「でも、いいの?まだこんなに朝早いのに。」
一番早い生徒が来るのもあと十分くらい経ってからだと思う。そのくらい早い時間。
でも、いいんだ。
「いいんだ。ありがとね。」
バックを膝の上において、車椅子を動かす。ちゃんと作動するのを確かめてから、僕は母さんに手を振った。
「じゃあ、いってきます。」
車に背を向けた時、微かに母さんの嗚咽が聞こえた気がした。
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