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僕の幸福理論
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アラシside
「君は…?」
俺の登場で少しは冷静を取り戻したらしい保健医は、泣きそうな顔を引っ込めて不思議そうな顔をした。
「北早荒矢。アズマと知り合い。」
状況を理解できていないヒトミを完全に無視し、保健医に近づいていく。
「ナァ、連れてってヨ、センセー。」
真っ直ぐに人の目を見るのは、いつぶりだろうか。
逸らさないように、逸らせないように。
……曇りのねぇ目だな。
「…そうだね。沢山いた方がアズマくんも喜ぶと思うし。でも、一つだけ条件が…」
「アズマの記憶を刺激しねェように、ダロ?分かってんヨ。話は全部聞いてたし?」
俺の言葉に保健医はハッとして目を見開いた。でも、ヒトミの方が酷く動揺していたのを俺は見逃さなかった。
「んだよ。言いてェことがあんなら言えよ。」
軽く睨みながらそう言えば、ヒトミは睨み返しながら低くうなった。
「お前は、いいのかよ…アズマが記憶喪失のままで……覚えてないままで、それでも普通に接していられるってのかよ…!」
その言葉に、正直言って落胆した。
「話、聞いてたんだろ…?変に思わなかったのかよ。……アズマは…「アズマは。」」
聞いてられなくなって、重ねるように口を開いた。
「アズマはアズマはアズマは。さっきからさァ、なんなの?お前。一番近くにいて一番信頼されててよォ、なのに一番に裏切ったのはドコのどいつだと思ってんノ?」
アズマが自分の苦しみや悲しみを言葉にしないことは、少し一緒にいただけでもすぐに分かった。
だからこそ、それらを心の中に抱え込むことも、容易に想像できる。
なのにコイツは、ずっと一緒にいて、それでもそんなことこれっぽっちも知らないまま、自分勝手に現実を決めつけてる。
「真実を知って悔い改めたからって許されるワケじャねェんだヨ。どんなに後悔しても、アズマの苦しみもお前がしたことも消えねェ。そんなお前に、今更意見する権利も許される権利もねェ。」
こんなにも虫酸が走るのは初めてだ。それくらい、俺はコイツを許せない。
アズマが記憶喪失になったということは、少しでもなくしたい記憶があったんだと思う。そしてそれは、多分ヒトミに関係すること。
「…見舞いには、来んな。」
言いたいことを全部言うと、ヒトミはその場に膝をついて泣き出した。泣く資格もねぇと言いたかったが、怒りより呆れが上回ったから無視した。
てか、なんでこんな熱くなってんだヨ。
急に冷めて、恥ずかしい気になってきて、無言でその場を去ろうと校門に向かって歩き出した。
校門を出てどこに行こうかと考えていると、後ろから足音が聞こえてきた。
喧嘩してる以上、後ろを取られるのは誰でも許さない。
自分の攻撃範囲に入る前に振り向いて、誰が来たのかを確認した。
「…って、何だヨ、てめェか。
なんか用か?保健のセンセー。」
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