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僕の幸福理論
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お見舞いに来てくれたのは、アラシだった。
ヒトミでは、ない。
でもしょうがない。
別に、仕方のないことだ。
笑えばバレない。誤魔化せる。
そうすれば、誰も傷つかないんだ。
「…アズマ、さぁ。」
少しの間沈黙が続いたと思うと、ふいにアラシが口を開いた。
「なに??」
「なんで笑ってんノォ?」
息の仕方を忘れたかと思った。
なんで?
だって、笑うしかないじゃないか。
僕が笑えば済むことなんだ。じゃあ笑えばいい。
そしてこの考えは、誰にもバレないように。
「……なんでって、アラシが来てくれて嬉しいからだよ。病院って本当に何も無いから、来てくれて本当に嬉しい。」
笑う。笑え。楽しそうに。
なんでなんて考えちゃダメだ。そんなことしたら、きっと僕は僕でいられなくなる。
「……俺は、お前が無理して笑ってるように見えるケド?」
違うよ。違わないといけない。
「そんなことないよ。」
睨むようにこちらを見るアラシを、ただただ笑顔で受け止める。
「……オカシイだロ、そーゆーの。」
「…え?」
ずっと考え事をしていたせいか、アラシの言葉をそのまま理解することが出来なかった。
聞き返さない方がよかった。
そう思った時には、もうアラシの口から言葉が紡がれていた。
「迷惑かけてると思いながらもテメェの気持ち突き通してガッコー来てたんだロ?なんで今更誤魔化して笑ってんノ?騙せるとでも思ってんのか?」
アラシの言葉は、一つも残さず理解出来た。
だってそれは、僕が隠し通してた本当の気持ち。
なんで知ってるの。なんで分かってるの。
違う、今はそこじゃない。隠さなきゃ。
否定して笑わなきゃ。
でも、言葉が出ない。
「……自分で思ったことねェノ?なんかおかしいって。」
おかしい?
「……そんなの、とっくに知ってるよ。」
気づいてる。もうずっと前から。
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