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ゆけむり物語 4
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「いらっしゃいませ中村様、お待ちしておりました」
「こんにちは、お世話になります」
にっこりと僕らを迎えてくれたのは優しい雰囲気の年配だけども、綺麗な女将さんやった。旅館は想像していたよりもずっと立派で、いかにも老舗という感じがする。だからこそか、はたまた鈴木さんの親戚だからということか僕らの事には「お話はお伺いしております」とだけでそれ以上は何も聞いて来なかった。
お部屋にご案内致します。と女将さん直々に案内してくれる。後ろから着いてきてる友希を見ると、嬉しそうににこりと笑った。
「綺麗なとこやねぇ」
「な。静かやし自然がいっぱいやし、露天風呂もあんねんて」
「えっほんまー?」
温泉という単語に反応してる。露天風呂ってのは伏せといたから友希は途端に目を輝かせた。ほんまは、友希を他のヤロー共の目に晒したくないってのが本音やけど、温泉に行きたいって願いを叶えんわけにはいかんし、せっかくなら友希の期待を超えたいやん。
「んふふ、内緒にしといたんやけどね」
「うわあっ嬉しいっ」
手にした荷物を抱え直して、首をこてんと傾げた。
めっちゃ可愛いんやけど・・・。
そんな友希を見てまたいらんことを考えた。
「こちらのお部屋でございます」
「あ、はい」
友希と話しながら着いて歩くと、他の部屋から少しだけ離れた客室に通された。本館と別館、そして何棟か孤立した離れの部屋があって、僕らはその中でも一番離れたところ。きっとこれも鈴木さんが話を通してくれたに違いない。鈴木さん、友希のこと好きやもんなぁ(あ、鈴木さんは友希のこと好きでも全然問題なしやで)
中に入ると広い和室と、隣に半露天の部屋風呂がついてた。障子で遮られた風呂は夜になるときっと風情が出てくるんだろう。
「うわ~っっすごい!」
「すごいねほんまに、友希よかったなぁ」
「うんっ」
荷物を置いて、窓から景色を眺める。ぱたぱたと風呂場の方に移動して声が聞こえた。
「悟っすごいよ、部屋風呂で、しかも外が見える~!」
友希がこんなにはしゃぐのって初めて見たかも。風呂を見に行こうかと思って、まてよ、と振り返ると女将さんがお茶の用意をしてくれていた。はしゃぐ友希の声を聞いてか、おかみさん自身もにこにこと楽しそうや。
でも、多分、勘のいい人やったらさっきからの僕らの会話で何かを感じ取ってると思うねんな。
話を聞いてるって、どこまで聞いてるんやろ。ふと疑問に思って、思い切って尋ねてみた。
「あのー、鈴木さんからは僕らのこと、なんて・・・」
「ふふふ。大変仲の良いご友人だと、お伺いしておりますよ」
さ、どうぞ。とお茶とお茶請けのお菓子を用意してくれながら品良く笑った。さっき、大変仲良くの、大変、にイントネーションが着いてた。きっとわかってる。でも、なんも言わない。さすがやなぁ。とか普通に感心してた時にやっと友希が戻ってきた。
いつもはどちらかというと、僕がはしゃいで友希が取り成すって事が多いけど、今日は逆やね。
「悟、凄いな!風呂の向こうにも部屋があって、そっちにはベッドがあってん!」
少し興奮気味に帰って来ると嬉しそうに笑う女将さんに気づいて、照れたように笑って座る。「すみません」と頭を下げる友希に「いえ、大変喜んでいただけたようで、私も嬉しいですよ」とお茶を友希の前に差し出した。
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