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ゆけむり物語 12
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慌てて友希を追って顔を洗い、浴衣を着て旅館のレストランに向かう。さっきめっちゃ怖かった友希はもういつも通りの優しい友希に戻っていて、僕の曲がった帯を笑いながら直してくれたりして、新婚夫婦みたいやぁと思った僕は思わずそんな友希にちゅうしたらくすくすと笑われた。
そういや・・・友希って高校時代、可愛いだけやなくて喧嘩強いで有名やったもんな。気を付けよう。
こっそり反省して朝ご飯を食べに行った。
和食の朝ご飯。土鍋で炊いた白ご飯はそれだけでご馳走で、僕はさっそく何度もおかわりをする。
「鮭美味しいな~、玉子焼きも美味しい」
「ほんまやぁ、朝からこんな豪華なごはん食べて、贅沢やね」
「たまにはええよ、いつも僕食べるばかりやし、いつもごめんって思ってんで」
「なに言うてんの、食べて貰うの嬉しくて作ってるんやで俺」
納豆を掻き混ぜて笑う。
ご飯をよそってくれる友希が奥さんみたいやぁとご機嫌の僕の耳に、聞きなれた、でもありえない声が入ってきた。
「諒くん、ごはん美味しいなぁ」
「おっさん、食いすぎや。太るで」
「大丈夫大丈夫、俺モデル出身だから」
「は?なんの関係あんねん」
「自己管理はできてるってことやで」
ぴたりと箸が止まる。口を開けたまま急にストップした僕をいぶかしげに見上げる友希。
ちょ、ちょっと待って。
「どうしたん?悟。こぼすよ?」
手にした味噌汁茶碗を慌てて支えてくれる。
いや、ちょっと待って、そんなわけ・・・
「いやー、諒君と旅行来れて良かったわぁ、鈴木も快く休みくれたしな」
「無理やりやろ」
「ちゃうって、ここの女将さんとは古くから知ってるから是非って」
「ふーん」
間違いない。まだ気づいてない友希はきょとんとした顔で漬物を食べている。
恐る恐る後ろを振り返る。ゆっくり、ゆっくりと。僕と後ろにある衝立の隙間から隣を覗いてみた。
「よっ、悟ちゃんっ」
「げっ、社長!」
「げってなんやねん。聞いた?諒君」
「うん、雇い主に向かって言うセリフやないな」
「なななな、なんでここに!!」
「え?休暇」
「え、上坂さん、と諒!?」
やっとやり取りに気づいた友希が首を伸ばして僕の後ろに目を向けた。すでに衝立は社長の手によって横に追いやられて、そこには満面の笑みを浮かべる上坂昌と、その恋人になりたての高橋先輩が味噌汁を啜っていた。
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