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この世界のこの瞬間 2
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今日はスタジオには入らず、楽屋で渡すと告げたのに「せっかくだから見て行ったら?仕事中のあの子はカッコいいと思うわよ」と橘さんに言われて、カッコいい悟、をやっぱり見たいなと思った俺は素直にスタジオに入れてもらった。
コンセプトとかそんなものがあるのか、俺にはわからないんだけれど、今日は女性誌と男性誌の共同企画らしくそれぞれの代表的モデルと言われる人がそれはもう、なんかのパーティかと思うほどに華やかにそこにいた。
その中には勿論、悟もおって、何故か男性は悟だけやった。
「あの、橘さん」
「ん?」
「女性はたくさんいるのに、なんで男は悟だけなんです?」
「ああ、悟一人で十分だからよ」
「へぇ・・・」
自信満々にそう答えてから、僕の手から悟の衣装を受け取りその場におったスタッフに手渡した。
上坂さんや鈴木さん、そして橘さんにまでそう言わせる悟は何者なんだろうと時々考えることがある。高校までは普通に買い食いして寄り道してたのに、この業界に入ってからは本当に、悟と自分が住む世界は違う次元なのではないかと、隣で眠る悟の顔を見て何度も思った。
「ほら、見てて」
橘さんがそうつぶやくとシャッターの切られる音と、カメラマンの支持だけがスタジオに響いた。
クリスマス時期の優雅な船上パーティという設定らしく、それはそれは豪華なドレスを(実際誰がやんねんこんなパーティー)身に纏った女性たちがシャンパングラスを手にしてセットのソファに腰掛けている。
「綺麗でしょ?うちの自慢の子たちよ」
「そうです、ね」
ほんとにため息が漏れる。こんなに綺麗な女性達がこれでもかというくらいに集まって、クリスマスパーティーをしてるなんて、ほんまにどんな状況やねん。一生そんなとこ遭遇せんわ。と毒づく余裕もなく見惚れていた。
ふわふわのパーマをかけた髪を緩く纏めて、タイトなマーメイドドレスでシックに。小柄な女性は短めのドレスでハイヒールに白いファーが着いていたりして、ほんまに可愛い。
はあ。とため息を着いたのが橘さんに聞こえてたみたいでくすりと笑われた。そうか、この人たちのほとんどを橘さんが手掛けてるんだ。それは、自慢になるよなあ。なんて思ってたら、そこに現れたのが中村悟。
はぁぁ。
今度は俺だけやなくて、スタジオ中から溜息が漏れた。
それは一緒に仕事をしているはずの女性モデルも違わずで、小さく声を零している。
その瞳は完全に恋に落ちたと言っても過言ではない。かくいう俺も、思わず息を呑んだ。
薄いピンクのシャツの上にグレーのスーツを身に着けて、最近少し伸びてきていた黒髪を後ろにふんわりと流して、少し目元を強調するために化粧をされているのか、いつも見てる悟よりも更にきりっとした視線だ。
女性誌の妄想らしい設定の「クリスマスパーティー会場に現れた王子様」だと橘さんから聞かされた。
カシャカシャと途切れることの無いシャッター音の中、立ち上がった女性達がみんな悟に近寄っていく。一人一人に柔らかく、優しい笑顔で応え、隣に立つ女性の腰に腕を回したりしてエスコートをしては女性をメロメロにしていってるのがわかった。
きっと悟の中で、今日は王子っていう設定になりきってるんだ。
そう、思わせた。
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