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この世界のこの瞬間 4
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家に帰って部屋の掃除をする。悟の部屋もすっかり片付けてから自分の家に戻ると、隣に比べて随分と生活感があるなと改めて思った。ほんとに悟は寝るためだけに家に帰っているようなものだ。
掃除を済ませて、洗濯物を放り込んでから夕飯の支度に取り掛かった。
今日は何にしようか。食に対してあまりこだわりのない自分が毎日の献立をこれだけ考えるのはひとえに悟のためだ。
「今日も・・・遅いんかな」
最近、作って待っていても0時を超えることが多々あって、当初待っていたのだがあまりにも続くものだから悟から『ちゃんと食べてて』と指令を受けた。
悟曰く、ほっといたら俺は何も食べなくなるそうな。確かにそうで、夜遅くなると食欲も失せていき、悟と食事を取るころにはもう気持ち的にお腹いっぱいになって、食べないこともあった。それが心配と悟は何度も言っていた。
「ビーフシチューつくろ」
いつでも温かい物を食べさせてあげられるしな。
課題なんてそんなものはとうの昔に終わってる。エプロンを着けてキッチンに立った。
「ゆうき、」
「ん、」
「友希、こんなとこで寝たら風邪引くで」
「んん・・・、悟?」
「うん、ただいま」
「うん・・・」
夕飯を作って風呂に入り、洗濯物を畳みながらテレビをぼーっと見てたら、いつの間にか眠っていたらしい。目を擦りながら身体を起こすと悟が俺を覗き込んでいた。
カーペットにぺたりと寝そべって寝ていた俺は時計を見て溜息を付く。
もう、1時近い。
笑っている悟の顔も疲れが隠せない感じだ。抱えていた荷物を置いて起こされた俺を優しく抱き締めてくれる。
「もー、身体冷えてるやん」
ぽんぽんと背中を叩かれて、悟の肩に顎を乗せた時やった。ぶわりと、いつもの悟の匂いじゃない甘い香りが鼻を突いた。
え・・・?
「今日、ごめんなぁ友希。事務所まで来て貰って」
「・・・」
悟の声が耳に入るのに、入ってこおへん。なに、この匂い。
ばっ、と身体を離すと悟が驚いた様に俺を見る。
「え、なに?どうしたん?」
「・・・悟、その匂い」
「え?匂い?ああ、なんか今日一緒に仕事した女の子が、」
俺に言われて、慌てる様子も無く服の匂いを嗅ぐ。悪びれも無く今日一緒に仕事をしたという女の子のことを口にする。
・・・嫌や。
そう思った瞬間、俺は立ち上がって不思議そうに見上げる悟から離れた。そのまま自分の部屋に向かう。きょとんとした悟は何があったのかわからないといった表情で俺を見上げ、え、え?と言葉を探してる。
「どうしたん?友希」
「・・・なんもない」
「なんもないって感じやないけど」
「悟、今日女の人たちから、」
そこまで言って、部屋を出た。あかん、なんかいらんこと言いそう。俺に続いて立ち上がり形勢逆転した悟を見上げて、唇を噛んだ。俺の腕を悟の長い腕が捕えた。その瞬間昼間の光景が目の前に蘇る。
「なんもないっ」
困ったような顔をした悟を見てると、いたたまれなくなって腕を振り払って部屋に駆け込んだ。
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