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俺のヒーロー
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きっと今日、俺はここで死ぬ。
圧倒的戦力差。未熟な軍隊。賭け事には強かったんだけど、俺の運も尽きたかな。いや、そもそもこの場にいる時点で運が悪かった。
撤退命令出る前に俺のいる隊は全滅するだろう。もういいや降参して捕虜にでもなろうか。それも面倒だ。いっそ狂って銃を投げ捨て喚き散らして敵陣に突っ込もうか。もう何だっていいや。
覚悟というよりは、全て投げ出した俺はその場から動かなかった。ただ静かに目を閉じてその時が来るのを待っていた。その辺の雑音も特に気にならなかった。
気にならな…あれ。
「きみ、大丈夫っ?」
ハッと目を開けると目の前に男性がいた。見たことのない人だった。男性は俺の肩を抱きかかえ岩影に連れて行った。
「ここに隠れてて。大丈夫、絶対死なせないから」
男性は俺の目を真っ直ぐ見てきた。目の下の隈は気になるが、なかなかの男前かもしれない。
男性はポンっと俺の肩を叩き、ふっと笑った。
あっ、かっこいい。すきかも。
ぽかんとした俺を置いて男性は銃を手に飛び出していった。
どれだけ俺はそこにいたのだろう。銃を抱きしめ身を縮め、彼を待った。
大丈夫だと言った。絶対死なせないと言った。本当に?本当に?
全てどうでもよくなったはずなのに、彼の存在が俺を一気に不安にさせた。
何が大丈夫だ。中途半端に助けて、希望を持たせて。全然大丈夫じゃなくなった。こんなにこわくなかったのに。不安じゃなかったのに。
お願い、戻ってきて。
ぎゅっと拳を握りしめた時だった。
「撤退、していいって」
見上げると息を切らしたあの男性がいた。
「帰ろっか」
ニッと少し幼く笑う彼は手を差し出した。
すきだ。確信に変わった。
俺は強くてかっこよくて、少しかわいい彼の手をとり、立ち上がった。
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