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好きなひと 2
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兄さんたちがいつから付き合っていたなんて知らないけど、雰囲気から察するに、短い期間ではなかったように思う。
兄さんからセンセイを紹介されてから春が過ぎ、そしてやってきた、夏。
蒸し暑い日が続いていた、あの日。
兄さんは、突然帰らぬ人となってしまった。
横断歩道に突っ込んだ車。
運悪く渡っていた兄さん。
無情にも、兄さんを跳ね飛ばした車。
病院に着いた時は、もう息をしていなかった。
病院でも、家に帰ってからも。
お葬式の間中も、ずっとずっと泣いていた。
信じられなくて。
信じたくなくて。
夢だと思いたかった。
だけど、目が覚める度に、現実だと思い知らされた。
センセイは、告別式にもお葬式にも姿を現さず……その後一度も見かけることはなかった。
センセイが立ち上がる素振りをみせたので、顔を窓の方へ戻す。
カフェオレを飲み、爽やかな青空を見上げた。
「要」
「ん?なに?」
呼ばれ、顔をセンセイに向ける。
センセイは、俺をじっと見ていた。
──俺、じゃないか。センセイはきっと、兄さんを見てる。
「……いや、何でもない」
センセイは再び椅子に座り、書類を読み始めた。
「そ?ごちそーさま。俺帰るね」
ベッドから降りて、マグカップを机に置く。
「あぁ。またな」
「うん」
センセイを見ることなく、俺は保健室を後にした。
校舎を出て、寮までの道を歩く。
思い出すのは、センセイの悲しさの灯る瞳。
胸がツキリと痛んだ。
桐生貴明(キリュウタカアキ)。
学園の保険医。
兄の、恋人だった人。
それが、俺──吉沢要(ヨシザワカナメ)の好きなヒト。
辛い、辛い──身代わりでしか見てもらえない、恋。
唇をキュッと噛み締め、寮までの道のりを歩いた──……。
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