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〜another story〜
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〜another story〜
「部活、お疲れ様。少し良いかな?」
サッカー部のキツイ練習が終わって、今日は俺が部室の鍵の当番だったから返そうとする最中に朝日 陽介くんに話しかけられた。
彼の事はよく知っている。女子たちの恋愛話の中には必ず出てくる人物だし、この学校の非の打ち所がなく、有名人だ。
そして何より、西原くんの相談相手で親しい友人。全くもって羨ましいものだ。
「…うん。俺もいつか話してみたいと思ってたんだ」
「‘だって彼のお友だち’だから?」
「…やっぱり聞いてるんだ。うん、そうだね。それもあるし、ただ単に個人的に気になる存在だからね。西原くんの友人ならたくさんいるし」
「…少し長くなりそうだね。そこのベンチに座ろっか」
「そうだね」
頭の良い人は嫌いだ。
特に朝日 陽介くんみたいな、一手のみならず二手三手…それ以上の事を読んで言葉にする人は。放たれた言葉は偽りばかりに聞こえてしまうから。
だから嫌い。
俺は西原くんみたいなストレートに物怖じせず放つ言葉が好きだ。ハッキリと言おうとするあの姿勢が大好きだ。
「朝日くんは俺の事、嫌いでしょ」
俺たちはベンチに座る。部活が終わってから少し時間が経ったせいか、辺りには誰もいない。
「疑問じゃなくてもう既に肯定なんだね」
「違った?」
「ううん、正解。俺は神無月の事が嫌いだよ。神無月だって俺の事嫌いでしょ」
「あはは、…良くわかったね?俺も朝日くん、大嫌いだ」
シーンと静まり返ったこの場所は周りと比べて一段と空気が重い。
西原くんがいたらどんな反応するのかな。きっとワタワタしてこの空気をどうにかしようかと必死になるんだろうな、なんて。
「嫌いだけど…俺は神無月の事、一応は認めてんだよ」
「……………。……それは、意外だなぁ」
「へぇ、信じちゃうんだ。案外無防備なんだね?」
「あは、やめてよ、気持ち悪い。朝日くんが今嘘をついてもメリットがないも無いじゃないか。君はどちらかと言えば、損得で選ぶタイプだろう」
「…俺の事もリサーチ済みって訳ね。流石はストーカーくん」
「…そう呼んで良いのは、西原くんだけだから。やめてくれないかな?」
「ふはっ、どんだけ余裕がない訳?」
「…ないよ。ある訳ないじゃん。俺、これでも本気なんだ」
「まぁ、逆に本気じゃなくてストーカーしてたんならぶん殴るよね」
「…あはは、こわーい。……そして更に初恋なんだ。…だから絶対に手に入れたい。邪魔、しないでくれないかな?」
「…どんな方法を使っても手に入れたい気持ちはわかるよ。…でもアイツは俺の大切な友達なんだ。俺は神無月と関わりがないからアイツを傷つけたら真っ先にアイツを庇うよ」
「…朝日くんとは違った気持ちで西原くんを傷つけたくないと思ってるよ、これでも」
「百聞は一見に如かずって知ってるよね。バカと話してないから話し進むの速くて良いね。…ストーカーがバレたんだ。後は直接アタックしかないんじゃない?」
「…朝日くんは最初から知ってたみたいだけどね」
「ふふ、どうだろうね。…言質はとったよ。でも俺にもアイツにも信用して欲しかったら、行動で証明してみろよ」
「朝日くんには別に良いんだけどね。西原くんの1番になりたいし、しょうがないなぁ」
「……じゃあ、頑張って。…俺は一言も西原なんて言ってないけどね」
長いような短いような会話は朝日くんの言葉を最後に終わった。
ポツリと呟かれた最後の言葉。
………やられた。だから頭の良い人は嫌いなんだ。
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