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呼び捨てがしたくて。
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ピンポーン……ピンポーン……
「んっ……?」
あれ、いつの間にか寝てた、兄貴かな?
ガチャ
「ふぁーい、兄貴鍵もってな………なっ、なに。」
「よう。」
「なんで…?」
寝起きでぼやけた視界にうつったのは、孝介さんの姿だった。
「何、恋人の家に来たらだめなのか?」
「へ?…恋人…?」
本当にそう思ってる?
「違うのか?」
「いや、違くないし、嬉しいけど…なんで、来てくれたの…」
オレあんな態度とったのに
「心配だからに決まってんだろ。」
「心、配…」
「そうだよ。」
「そ…そっか……とりあえず、うち入る?」
「あー……うん。」
「言っとくけど、なんもないから…」
「期待してない。」
「はあ!?」
「いいから、ほれ。」
「?…なにこれ」
渡されたのはビニール袋。
「コンビニ弁当」
「かっ…神だ…!」
実は腹が減って死にそうだった。
「心して食え。」
「やったー!オレこれがいい!」
「聞いてねーし」
「え?なんか言った?」
「いやいい、好きなの食えよ。」
そう言って笑う孝介さんは、まるでいつも通りで、何も気にしてないみたいだった。
「うんっ!」
「ふっ…元気だな。」
「孝介さんも食べるんでしょ?」
「お前がいいなら。」
「いいに決まってんじゃん!」
「そうか。」
「待って今チンしてくる!」
「ああ…」
「はいこれ」
「どうも」
「いただきまーす!」
「いただきます。」
「うまー!」
「………良かった。」
「うん?」
「良かった。お前に嫌われたかと…」
「えっ?」
なに言ってんのこの人…
「俺に対してあんなに怒ったの初めてだろ」
「やっ、あれはっ…」
「?」
「なっ、なんて言っていいかわかんねえけど、そのっ…」
「なんだ?」
「あの…じじいが、孝介さんのこと呼び捨てにするからっ…だからオレっ」
「……呼び捨て?」
孝介さんは、されてたか?とか言いながら首を傾げている。
「されてたの!」
「…だからってそこで怒る理由はなんだ?」
心底わからないらしいこの人に、少しムカついた。だからこんな、いつもならしないような賭けに、出てしまった。
「だって…!…じゃあっ、じゃあさ、孝介さんの知らない男の人が、オレのことを晴臣って呼んでたら、どう思う?」
「?…そんなんどうも…」
ガチャガチャ…パタン
「……あれ…晴臣ー?誰か来てるのー?」
「はっ…あ、兄貴、おかえり。今ちょっと…その……」
ドタバタと走って玄関まで迎えに行く。
「お客さんかな…?」
「う、ん…まあ…」
「あー…じゃあ、おれ裕基くん家に泊まってこようかな。」
「は!?いいからそんなの!」
「んー、でもなあ…」
「気ぃ使うなよ!」
「気は使ってないよ…晴臣の成長が嬉しいだけ。」
へらっと笑ってオレの頭を撫でる兄こと清正は、とてもお人好しな人間だ。
「そっ、そんなこと…ねえし…」
「あ、の。すみません、こんな夜遅くにお邪魔してしまって…」
話し込んでるのを不思議に思ったのか、孝介さんが玄関までやって来た。
「あ、いえいえ、気にしないでください」
「もう帰りますんで…」
「へっ?」
帰るの…?
そんなオレをチラ見した兄貴は、
「……あの、晴臣のこと、お願いしてもいいですか?自分はこれから行かなきゃないけないところがあるので…」
「え。そうなんですか?」
「はい。じゃあ、また明日ね晴臣、あったかくして寝るんだよ。」
そう言ってまた頭を撫でる。
「やっ、やめ!」
「ふふっ、じゃあ…孝介さん、晴臣のことよろしくお願いします」
「は、はあ…」
孝介さんも柄にもなく、ぽかんと口を開けている。
「ばいばいハル。がんばって。」
バカ兄貴はオレにだけ聞こえる声で、確かにそう言った。
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