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電話でみぃは?
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「みぃにちょっかい出したら、許しませんよ?……じゃ」
客先からの帰り、事務所に入りながら、立花と電話をしていた。
瑞月の会社に行って、片付けようとしていた仕事があまり捗らず、立花と頻繁に連絡を取る羽目になっていた。
どうせなら、瑞月と話したい……が、仕事上そうは、いかない。
すれ違い様に後輩の野々 茉莉香(のの まりか)と目が合う。
俺のことを慕ってくれている、可愛い後輩。もちろん、恋愛対象ではない。
さすがに、自社ではゲイであることは隠している。野々もそれは知らない。
以前、『君に恋愛感情はない』と、はっきりと断った。それでも、彼女は俺を飲みに誘ったり、遊びに誘ったりしてきた。
今ではすっかり気の知れた後輩となっていた。
目が合った瞬間、彼女がにんまりと笑った気がした。
「なに?」
俺は恐る恐る、いつもの笑顔で野々に問いかける。
野々は、にやっと笑いながら口を開く。
「みぃって……」
バレたか? いや、男だと……恋人だとは思ってない?
俺の心臓がバクバクと音を立てる。
「猫ですか?」
野々が少し興奮気味に言葉を口にした。
俺は、予想していない単語に、一瞬、言葉を失う。
「飼ったんですか? どんな? 可愛いですよね、猫!」
矢継ぎ早に言葉を繋ぐ。
……あぁ、確かにみぃは可愛いけど。
瑞月の顔が頭に浮かび、思わず顔が緩んだ。
「うわっ。珍し。狭山さんでも、そんな顔するんですね。どおりで最近、付き合いが悪いわけだ」
納得顔でうんうんと頷く、野々。
「写真、ないんですか?」
「あぁ。撮らせてくれなくて……嫌がるんだよね」
……写真を撮らせてくれないのは、本当だった。自分が男だから、とか、可愛くないからと、嫌がるのだ。
俺は気にしてはいないのに……。
「そっかぁ、残念」
「野々ぉ~、ちょっとぉ」
遠くから、野々を呼ぶ声が聞こえた。野々は、じゃぁ、という素振りでその場を立ち去る。
まぁ、いい。そのまま、猫だと思っていてもらった方が、都合がいい。
瑞月は俺の可愛い子猫ちゃんだし……。
思わず笑みが零れた。
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