アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
お揃いで身につける物『ゆきの誕生日編5』 【ほのぼの】
-
茫然としながら、商品をいろいろと手に取ってみる。
でも、どれも幸也にはふさわしくない気がして、元に戻す。
そんなことを繰り返していたら、絢乃さんがぴょこっと横から顔を出す。
「なしたの? 決まらない?」
うーんっと唸る僕に、絢乃さんは相変わらず、くすくすと笑う。
「本当、可愛いわ。持って帰りたくなるわっ」
絢乃さんの言葉に、僕は、顔を顰めながらも頬が染まった。
ストレートな物言いに、どうしても照れてしまう。
「何がいいのかな…身につける物の方が嬉しいよね?」
絢乃さんはそう言うと、指折り、身近なものをリストアップする。
「財布、時計、名刺ケース、ネクタイ……」
「あっ!」
声に絢乃さんは、少し驚いたような表情を僕に向ける。
「ネクタイ、ネクタイにします」
先日、気に入っていたネクタイにコーヒーを零したと淋しそうに笑う幸也を思い出した。
にこりと笑った僕に、絢乃さんも嬉しそうに笑顔を返してくれた。
雑貨屋の5つ先に紳士服の店舗を発見し、そこへ足を向ける。
「どうせならお揃いにすれば?」
ゆっくりと歩きながら、絢乃さんが僕に問いかける。
「お揃いですか?」
「うん。だって、会社も違うし、同じネクタイなんて店に売ってる分だけあるんだから、お揃いのネクタイしてても変じゃないでしょ?」
てか、なんか可愛いくない? と、きらきらした瞳で僕を見る。
「見えない所で繋がってる感じっ」
絢乃さんはくすくすと笑いながら、1人、盛り上がる。
お揃いのネクタイ…。
繋がっている…感じ。
言葉を頭で復唱して、僕もなんだか嬉しくなる。
同じ時間を一緒に過ごせなくても、同じ物を身に着けて、傍に居るような錯覚を得る。
いいかも、しれない。
僕の気持ちも徐々に盛り上がってきた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
60 / 86