アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
真夜中の参拝『お正月編1』 【ほのぼの】
-
除夜の鐘を聞きながら、神宮の門前で年明けを待っていた。
整然と並んだ行列の中、雪がちらちらと降り、寒さで少し、手が悴んでいた。思わず、はぁっと手に息を吹きかける。
「寒いですか?」
上から、幸也の声が降ってくる。視線を向けると、少し心配そうな優しい瞳が、眼鏡越しに僕を向けられていた。
「少しだけ」
そう言って、笑んで見せる。幸也の手がそっと僕の手を掴んだ。僕は慌てて手を引っ込めようとした。でも、幸也は僕の手を離してはくれなかった。そのまま、腰の位置まで下げられる。
幸也の唇が僕の耳元に近づく。
「大丈夫。これだけ混んでたら、わかりませんよ」
ふふっと笑い、幸也の右手が僕の両手を暖めるように重ねられた。
周りに気付かれないとは思いながらも、僕の心臓はどうしてもドキドキと音を立てる。恥ずかしくなり、思わず、瞳を伏せた。
上からくすくすと幸也の笑い声が聞こえる。ちらっと盗み見た幸也は、正面を向いたままで、笑っていた。
「なに?」
少し怪訝な声で問いかけると、幸也の瞳が僕を捉える。
「照れてます?」
眉間に皺を寄せると、幸也の視線がまた、正面に戻る。
「顔、真っ赤ですよ」
キス…したくなる、と耳元で囁く。赤い顔がますます色味を増してしまう。
「からかわないでよっ」
僕の声と共に列が少しだけ動き始めた。幸也の手がゆっくりと離れて行く。僕は名残惜しくなり、幸也の小指をそっと掴む。少しだけ見開いた幸也の瞳。すぐに細くなり、笑みを浮かべた。僕はそのまま幸也の小指を掴んで鳥居を潜った。
この手をずっと放したくない。今年もずっと一緒に居たい。
そんな願いを込めて。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
72 / 86