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貸が1つ?『バレンタイン編6』 【ほのぼの】
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「一つ貸な」
絢乃さんとキッチンに立つ僕。立花さんの声に瞳を上げた。
にやりと笑う立花さんに、僕は、冷ややかな視線を向ける。
「ゆきのコト追い込んだ立花さんに『貸』なんてないですよ」
僕は、スパッと言い捨てた。
幸也の誕生日、大変だったんだからっ。
立花さんは、くすっと笑い言葉を繋ぐ。
「仲直り、燃えたんじゃねぇの? たまには、スパイスも必要だろ」
いやらしく眼を細め、対面キッチンの向こうから僕を見下ろした。
僕の脳裏に、あの時の激しく攻め立てる幸也の映像がフラッシュバックする。顔が一気に火照る。思わず、視線をシンクに落とした。
立花さんは、したり顔で笑い、話題を変える。
「てかさ、なに作ってんの?」
立花さんが、ぐいっと首を伸ばし、キッチンを覗き込む。
「欲しい? 瑞月くんの手作りチョコレート」
絢乃さんの声に、立花さんの視線が僕に向く。少し眉根を寄せたその顔は、僕と視線をぶつけると、にやっと笑む。
はっ? えっ?
「いいね、手作り。日頃の感謝で作ってくれんの?」
意地の悪い声で僕に問い、くすりと笑う。僕は、瞳を細め、立花さんを見やる。
「立花さんの為にじゃないです」
ぶっきらぼうな僕の声に、立花さんは、くすくすと笑いながら、キッチンの中へと足を踏み入れた。
「つめてぇなぁ…。オレのコト好きだったクセに」
冷蔵庫の右肩を預け寄りかかり、子供のように口を尖らせる。
「いつの話してるんですかっ」
昔の話を蒸し返され、恥ずかしくなり、僕は再び、視線を落とす。立花さんの手が僕の顎を捕えた。顔をくいっと立花さんに向けられる。僕の顔は真っ赤に染まっていた。
「オレは今でも瑞月のこと好きだよ?」
瞳を細め、色気を放ち、くすりと笑う立花さん。
僕は、瞳を瞬く。
「おふっ」
僕の頭の上から絢乃さんの手が伸び、立花さんの額を、ぐっと後ろに押しやった。
「はい、ちょっかい禁止。狭山に殺されるよ」
絢乃さんの呆れたような声に、立花さんは、くすりと笑い、ソファーへと戻って行った。
僕だって立花さんのコト、嫌いじゃない。
でも、その気持ちは、もう、恋じゃないんだ…。
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