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僕の手作りじゃない『バレンタイン編7』 【ほのぼの】
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アールグレイの紅茶を加えたミルクの生チョコと、ダークラムを加えたホワイトの生チョコが出来上がった。
ほとんど絢乃さんが作ったんだけど。
これじゃ僕の手作りとは……言えない、な。
リビングのテーブルに並べられた2種類の生チョコ。
僕は、1口大に切り分けられ、ココアパウダーを被ったそれを、ぼぅっと眺める。
「詰めないの?」
絢乃さんが不思議そうに僕に問う。
「……これじゃ僕の手作りって言えない、ですよね」
困ったように弱く笑む僕に、絢乃さんは、何かを思案するように瞳を浮かす。
僕に視線を戻すと、にこりと笑んだ。
「チョコは余ってるから、持って帰って作る? 分量と作り方、書いてあげるね」
「はいよ」
立花さんの手によって絢乃さんの目の前に、ボールペンとA4用紙が差し出される。
「ありがとう」
一緒に作るとついつい手が出ちゃんだよね、と呟きながら、絢乃さんは紙にレシピを書き始める。
「ダークラムは買っても余すと思うから、ホワイトだけは持って帰った方だいいかな……」
足りない材料を書きながら、首を捻り、僕に視線を向けた。僕は、コクンと頷く。
「じゃ、ミルクの方だけね。紅茶はうちの少し持って帰ってね」
絢乃さんはカリカリとペンを走らせながら、声だけを僕に向けた。
「はい。ありがとうございます」
僕と絢乃さんが会話をしている横から、にょきっと手が伸びてきた。
立花さんは整然と並ぶミルクの生チョコを1つ手に取ると、ぽいっと口の中に放った。
「やっぱうめぇな……ほれ」
視線を向けた僕の口にも同じチョコを放り込む。
確かに、ふんわりと香る紅茶とふわっと蕩ける食感が少しクセになる。
「頑張れよ」
食感を楽しんでいる僕の頭を、立花さんは、ぽんぽんっと叩いた。
僕は、絢乃さんに書いてもらったレシピと食材、完成しているホワイトの生チョコを持って、家路についた。
金曜日。仕事が遅くなり、慌てて帰宅して、絢乃さんのレシピを見ながら紅茶の生チョコを作る。
「後は冷やして、ココアでコーティングして……ラッピングして……」
冷蔵庫で1時間。汚れた調理器具を洗い終わり、ぐうっと伸びをして、ぼふんっとソファーへ倒れ込む。
疲れていた僕は、そのままソファーで眠り落ちてしまった……。
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